JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] [JJ] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

14:00 〜 14:15

[MIS15-08] コンクリート + フラクタル日除け = クールアイランド

*酒井 敏1菅原 広史2三坂 育正3成田 健一3本條 毅4清田 誠良5仲吉 信人6 (1.京都大学人間・環境学研究科、2. 防衛大学校、3.日本工業大学、4.千葉大学大学院、5.広島工業大学、6.東京理科大学)

キーワード:フラクタル日除け、ヒートアイランド、熱慣性

都会のコンクリートは、都市のヒートアイランドの元凶のように言われる。実際、夏の直射日光にさらされたコンクリートは周囲の気温より30℃程度高くなる。しかし、昼間に関しては、熱慣性の大きなコンクリートはむしろ都市の温度上昇を抑える役割をしているはずである。それにも関わらず、非常に高温になってしまう原因は、素材としての特性ではなく形状にある。ビルや道路のような人工物はメートル単位の大きさの表面を持つ。それに対して、自然の樹木の葉は数cm程度の大きさである。大きな表面積を持つ物体からの熱伝達率は小さいので、コンクリートに太陽からの熱をため込んでしまうと、それを放出するために非常に高温にならざるを得ない。これに対して、人工物でありながら、樹木の葉に近い形状にして、空気に対する熱伝達率を低く抑えたものがフラクタル日除けである。この日除けで太陽光を遮蔽し、コンクリート本来の高い熱慣性を利用すれば、日中の都会はクールアイランドになるはずである。

これを実証するために、日本工業大学の都市模型COSMOにフラクタル日除けを設置した。COSMOは100m×50mのコンクリート基盤の上に、ビルに見立てた1.5m角のサイコロ状のコンクリートブロック512個を3m間隔で並べたものである。壁面を含めたコンクリート表面の面積は、地表面積の2倍あるので、全体のバルクの熱慣性はコンクリート平面の2倍となる。ここに20m×20mのフラクタル日除けを設置し、日除けのない区画との比較を行った。フラクタル日除けは、南中時に遮光率最大になる層に加えて、午前と午後の日射を遮る層を設け、3層構造となっており、1日中ほぼ遮光率90%程度を維持している。また、比較のためCOSMOに隣接した草地での観測も行った。

フラクタル日除け下の区画、直射日光下のコンクリート区画、COSMOに隣接した草地で気温観測を行ったところ、日中の気温はフラクタル日除け下が最も低くなった。昼間の気温の鉛直分布を見ると、草地とコンクリート区画では、地表面に近いほど気温が高く不安定成層をしているのに対し、フラクタル日除け下では安定成層をしており、コンクリートが吸熱源として働いていいることが確認できた。