14:30 〜 14:45
[MIS15-10] 高温多湿大気における積雲対流の数値実験
キーワード:惑星大気、積雲対流、暴走温室状態、数値モデリング、組成対流
1 はじめに
海を持つ地球型惑星における生存可能条件の決定に重要な概念として「暴走温室状態」がある。これは海からの水蒸気供給と温室効果の正のフィードバックの暴走であり、Komabayashi (1967), Ingersoll (1969)、Nakajima et al (1992)によって定量的に議論された。彼らは大気上端から射出される放射量の上限(放射限界)の存在の重要性を示した。その値は、温度構造や相対湿度に依存し(たとえば Ishiwatari et al 2002 )、これらは大気の運動構造、特に積雲対流の影響を受ける。しかし、暴走温室状態の発生に近い、高温多湿大気における積雲対流の構造はわかっていない。そこで本研究では雲解像モデルを用いて実験を行う事で、その特徴を明らかにし、暴走温室状態のより詳しいプロセスの解明につなげたい。
2 モデルと数値実験の設定
本研究では地球流体電脳倶楽部で開発されている雲解像モデルdeepconv (Sugiyama et al 2015)を用いる。計算領域は水平128km、鉛直20km、また格子点間隔は水平250m、鉛直200mとする。温度と湿度はYamasaki(1983)の値を基準とし、これからさらに10、20、40K高温とした計算を行った。積分は10日間行う。
3 結果
現在の地球大気では一般的に積雲対流の上昇域は周囲より高温高湿であるが、今回の計算では、周囲より低温高湿であることが発見された。これは、高温多湿で水蒸気量が多い環境では、積雲対流が、空気と水蒸気の分子量差により駆動される「組成対流」の性質を強く持つことを示す。詳細は口頭発表で説明する。
References
Ingersoll, Andrew P. "The runaway greenhouse: A history of water on Venus." Journal of the atmospheric sciences 26.6 (1969): 1191-1198.
Ishiwatari, Masaki, et al. "A numerical study on appearance of the runaway greenhouse state of a three-dimensional gray atmosphere." Journal of the atmospheric sciences 59.22 (2002): 3223-3238.
Komabayashi, M. Discrete equilibrium temperatures of a hypothetical planet with the atmosphere and the hydrosphere of a one component–two phase system under constant solar radiation. J. Meteorol. Soc. Jpn 45, 137–139 (1967).
Nakajima, Shinichi, Yoshi-Yuki Hayashi, and Yutaka Abe. "A study on the “runaway greenhouse effect” with a one-dimensional radiative–convective equilibrium model." Journal of the atmospheric sciences 49.23 (1992): 2256-2266.
Sugiyama, K., Odaka, M., Yamashita, T., Nakajima, K., Hayashi, Y.-Y., deepconv Development Group, 2015: Non-hydrostatic model deepconv, http://www.gfd-dennou.org/library/deepconv/, GFD Dennou Club.
Yamasaki, M., 1983: A further study of the tropical cyclone without parameterizing the effects of cumulus convection. Pap. Meteor. Geophys., 34, 221-260.
海を持つ地球型惑星における生存可能条件の決定に重要な概念として「暴走温室状態」がある。これは海からの水蒸気供給と温室効果の正のフィードバックの暴走であり、Komabayashi (1967), Ingersoll (1969)、Nakajima et al (1992)によって定量的に議論された。彼らは大気上端から射出される放射量の上限(放射限界)の存在の重要性を示した。その値は、温度構造や相対湿度に依存し(たとえば Ishiwatari et al 2002 )、これらは大気の運動構造、特に積雲対流の影響を受ける。しかし、暴走温室状態の発生に近い、高温多湿大気における積雲対流の構造はわかっていない。そこで本研究では雲解像モデルを用いて実験を行う事で、その特徴を明らかにし、暴走温室状態のより詳しいプロセスの解明につなげたい。
2 モデルと数値実験の設定
本研究では地球流体電脳倶楽部で開発されている雲解像モデルdeepconv (Sugiyama et al 2015)を用いる。計算領域は水平128km、鉛直20km、また格子点間隔は水平250m、鉛直200mとする。温度と湿度はYamasaki(1983)の値を基準とし、これからさらに10、20、40K高温とした計算を行った。積分は10日間行う。
3 結果
現在の地球大気では一般的に積雲対流の上昇域は周囲より高温高湿であるが、今回の計算では、周囲より低温高湿であることが発見された。これは、高温多湿で水蒸気量が多い環境では、積雲対流が、空気と水蒸気の分子量差により駆動される「組成対流」の性質を強く持つことを示す。詳細は口頭発表で説明する。
References
Ingersoll, Andrew P. "The runaway greenhouse: A history of water on Venus." Journal of the atmospheric sciences 26.6 (1969): 1191-1198.
Ishiwatari, Masaki, et al. "A numerical study on appearance of the runaway greenhouse state of a three-dimensional gray atmosphere." Journal of the atmospheric sciences 59.22 (2002): 3223-3238.
Komabayashi, M. Discrete equilibrium temperatures of a hypothetical planet with the atmosphere and the hydrosphere of a one component–two phase system under constant solar radiation. J. Meteorol. Soc. Jpn 45, 137–139 (1967).
Nakajima, Shinichi, Yoshi-Yuki Hayashi, and Yutaka Abe. "A study on the “runaway greenhouse effect” with a one-dimensional radiative–convective equilibrium model." Journal of the atmospheric sciences 49.23 (1992): 2256-2266.
Sugiyama, K., Odaka, M., Yamashita, T., Nakajima, K., Hayashi, Y.-Y., deepconv Development Group, 2015: Non-hydrostatic model deepconv, http://www.gfd-dennou.org/library/deepconv/, GFD Dennou Club.
Yamasaki, M., 1983: A further study of the tropical cyclone without parameterizing the effects of cumulus convection. Pap. Meteor. Geophys., 34, 221-260.