JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] [JJ] 海底マンガン鉱床の科学:基礎から応用まで

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア総合研究センター)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)

[MIS17-P09] コバルトリッチクラスト基盤岩のリン資源としての利用

*山崎 哲生1黒田 桂菜1中谷 直樹1新井 励1 (1.大阪府立大学)

キーワード:コバルトリッチクラスト、リン、リン酸塩化、基盤岩、海底資源開発

食糧の増産に必要な肥料用リンの供給源となってきた陸上のリン鉱石の供給減少と埋蔵量枯渇の心配から,2008年にリン鉱石の価格高騰が起きた。リンは食品廃棄物,下水,焼却灰から回収することができるため,日本を含む先進国では,これらからのリサイクル(循環)システムを構築することによって,この問題を解決しようという研究が継続されているが,高コストがネックとなって,実用化には至っていない。一方,食肉生産を重要な産業としているアメリカやニュージーランドにおいては,特に牧草肥料用のリン鉱石由来のカドミウムが食肉に蓄積されることを避けるという食品安全性の視点から,カドミウムをほとんど含有しない海底リン資源の開発をめざした民間企業のプロジェクトが動き始めている。
2015年に国際的合意に達したSDGsにおいては,2030年までに貧困と飢餓を根絶する目標が掲げられている。また,これも2015年に国際的合意に達した地球温暖化対策のパリ協定において,今世紀後半には実質的なCO2等排出量をゼロにすることをめざすこととなった。このため,化石燃料の消費を減らしながら,南アジアやサブサハラの発展途上国からの飢餓の根絶と,中国やインドなどの新興国における食肉需要の増大に対処しなければならないことになる。
そこで、日本の排他的経済水域に大量に存在するコバルトリッチクラストの基盤岩をリン資源供給源とすることを提案する。クラストの基盤岩のうち,石灰岩質のものは,古いものほどリン酸塩化することが知られており,日本のEEZ周辺海域のものはリン含有率が高いと推定される。クラスト開発時に不可避な混入基盤岩を副産物として利用できれば,クラストの開発可能性も高まることになる。