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[MIS18-05] 雷雲ガンマ線の多地点観測プロジェクト: 可搬型検出器の開発と2016年度冬季の観測成果
キーワード:冬季雷雲、ガンマ線、電場、電子加速
雷雲内の強電場領域では電子が加速されていると考えられており、日本海沿岸で発生する冬季雷雲においては、大気中の制動放射により10 MeVに達するガンマ線が地上で観測されている (Trii et al., 2002, Tsuchiya et al., 2007) 。この雷雲における電子加速現象の時間発展や空間構造を明らかにするため、我々は雷雲ガンマ線を多地点で検出するマッピング観測のプロジェクトを推進している (榎戸ほか JpGU 2016 M-IS14、榎戸ほか JpGU 2017 M-IS05)。当プロジェクトでは独自のADC基板を開発することで、検出器の小型化を行っており、2016年度はRaspberry Piによって制御できる、9.5 cm×9.5 cmの、50 MHz波形サンプリングADCを4ch搭載したFPGA/ADCボードと、プリアンプ・シェイパー・GPS受信機・高電圧供給モジュールを搭載したフロントエンドカードを開発した。これらの信号処理系とBGOシンチレータを搭載した可搬型ガンマ線検出器は、2016年10月から石川県金沢市・小松市へ5台、12月に同珠洲市へ1台、新潟県柏崎市へ2台、計8台を設置し、観測を開始した。同12月8日から9日には日本海上を通過した低気圧の影響により、北陸地方で雷雲活動が活発となり、金沢市と小松市の4台で1分以上にわたる雷雲ガンマ線を検出した。ガンマ線スペクトルは10 MeVにまで達するべき型分布を示していた。さらに小松市に1.4 km間隔で設置した2台の検出器で捉えた雷雲ガンマ線は、検出の時間差が強雨域の通過に要する時間と一致しており、1つの雷雲から放出されたガンマ線の多地点検出に成功した。本講演では信号処理系の開発状況、および検出した雷雲ガンマ線の解析結果について報告する。