09:15 〜 09:30
[MIS19-02] 3種のモデル海洋細菌株により生成された難分解性溶存有機物の比較
キーワード:海洋炭素循環、溶存有機物、微生物炭素ポンプ、海洋細菌単離株
海洋溶存有機物(Dissolved Organic Matter、DOM)は、全炭素量662 Pg Cの巨大な炭素リザーバーを構成する。海洋DOMの90%以上は、生物的に難分解なDOM(Recalcitrant DOM、RDOM)である。海洋におけるRDOMの生成・分解過程についての知見は少ないが、近年、海洋細菌によるRDOM生成機構“微生物炭素ポンプ”が提唱され、地球表層における炭素隔離機構としての重要性が示唆された。この概念によれば細菌の働きにより易分解性DOM(Labile DOM、LDOM)がRDOMへ変換される。微生物炭素ポンプの概念形成は、主に海洋細菌群集の培養実験から評価されたRDOM生成によりなされた。海洋細菌群集を用いた先行研究では、細菌種間のRDOMの生成効率の差や生成機構の違いは評価できず、微生物炭素ポンプの機構や制御要因の解明には至っていない。
そこで本研究では、既知のLDOMを添加した培養実験を複数種の細菌単離株について行い、培養中に生成された細菌由来DOMの炭素量および光学特性を分析することで、RDOMの生成効率や組成の細菌種間での異同を明らかにし、微生物炭素ポンプの機構や制御要因を解明することを目的とした。
細菌単離株は、Gammaproteobacteria網に属するAlteromonas macleodii(A. macleodii)とVibrio splendidus(V. splendidus)、Alphaproteobacteria網に属するPhaeobacter gallaciensis(P. gallaeciensis)を用いた。唯一の炭素源としてグルコース(1 mmol C L-1)、さらに無機態窒素とリンを加えた人工海水を培養液として使用した。4つの処理区:(1) グルコースと細菌株を添加した実験区、(2) グルコースと細菌株を添加しない区、(3) グルコースを添加しない区、(4) 細菌株を添加しない区を用意した。250 mL容のポリエチレンテレフタレートボトルで暗所・25℃で1–2週間培養し、計8回の三反復のサブサンプリングを行った。未濾過サンプルを用い細菌数と総有機炭素濃度を、GF75フィルター(孔径0.3 µm)の濾液サンプルを用い溶存有機炭素濃度、DOMの三次元蛍光スペクトルと吸収スペクトルを分析した。
溶存有機炭素濃度は、3種の細菌株に依らず、培養初期の急激な減少の後、消費され尽くされずに残存し、培養終了時まで大きな変動はなかった。これは、グルコースの消費後、細菌由来DOMが残存したことを示唆した。しかし、残存したDOC濃度はV.splendidusで205±11 µmol C L-1とA. macleodii(51±4 µmol C L-1)やP. gallaciensis(75±3 µmol C L-1)と比較して顕著に高かった。つまり、細菌種によってRDOM生成効率が異なる可能性が示唆された。培養前の培地における三次元蛍光スペクトルには顕著な蛍光ピークは見られなかったが、培養後のDOMの三次元蛍光スペクトルには3種の細菌株間で特徴的な蛍光ピークが見られた。しかし、生成された蛍光ピークの数とピーク位置は3株間で異なっており、RDOMだと考えられている腐植様蛍光ピークの組成に3株間で違いが見られた。例えば、Gammaproteobacteriaに属する2株では蛍光波長500 nm以上の波長域に位置する腐植様蛍光ピークを持つDOMを生成したが、Alphaproteobacteriaに属するP. gallaciensisでは同様な腐植様DOMを生成しなかった。これらのモデル細菌株の比較実験から、同じ基質を用いたとしても細菌種・綱により生成されるRDOMの効率や組成が異なることが示唆された。
そこで本研究では、既知のLDOMを添加した培養実験を複数種の細菌単離株について行い、培養中に生成された細菌由来DOMの炭素量および光学特性を分析することで、RDOMの生成効率や組成の細菌種間での異同を明らかにし、微生物炭素ポンプの機構や制御要因を解明することを目的とした。
細菌単離株は、Gammaproteobacteria網に属するAlteromonas macleodii(A. macleodii)とVibrio splendidus(V. splendidus)、Alphaproteobacteria網に属するPhaeobacter gallaciensis(P. gallaeciensis)を用いた。唯一の炭素源としてグルコース(1 mmol C L-1)、さらに無機態窒素とリンを加えた人工海水を培養液として使用した。4つの処理区:(1) グルコースと細菌株を添加した実験区、(2) グルコースと細菌株を添加しない区、(3) グルコースを添加しない区、(4) 細菌株を添加しない区を用意した。250 mL容のポリエチレンテレフタレートボトルで暗所・25℃で1–2週間培養し、計8回の三反復のサブサンプリングを行った。未濾過サンプルを用い細菌数と総有機炭素濃度を、GF75フィルター(孔径0.3 µm)の濾液サンプルを用い溶存有機炭素濃度、DOMの三次元蛍光スペクトルと吸収スペクトルを分析した。
溶存有機炭素濃度は、3種の細菌株に依らず、培養初期の急激な減少の後、消費され尽くされずに残存し、培養終了時まで大きな変動はなかった。これは、グルコースの消費後、細菌由来DOMが残存したことを示唆した。しかし、残存したDOC濃度はV.splendidusで205±11 µmol C L-1とA. macleodii(51±4 µmol C L-1)やP. gallaciensis(75±3 µmol C L-1)と比較して顕著に高かった。つまり、細菌種によってRDOM生成効率が異なる可能性が示唆された。培養前の培地における三次元蛍光スペクトルには顕著な蛍光ピークは見られなかったが、培養後のDOMの三次元蛍光スペクトルには3種の細菌株間で特徴的な蛍光ピークが見られた。しかし、生成された蛍光ピークの数とピーク位置は3株間で異なっており、RDOMだと考えられている腐植様蛍光ピークの組成に3株間で違いが見られた。例えば、Gammaproteobacteriaに属する2株では蛍光波長500 nm以上の波長域に位置する腐植様蛍光ピークを持つDOMを生成したが、Alphaproteobacteriaに属するP. gallaciensisでは同様な腐植様DOMを生成しなかった。これらのモデル細菌株の比較実験から、同じ基質を用いたとしても細菌種・綱により生成されるRDOMの効率や組成が異なることが示唆された。