JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] [JJ] 生物地球化学

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 302 (国際会議場 3F)

コンビーナ:楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、座長:砂村 倫成(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:和穎 朗太(農研機構 農業環境変動研究センター)、座長:仁科 一哉(国立環境研究所)

10:45 〜 11:00

[MIS19-07] 水田土壌のメタン酸化微生物食物連鎖の構造と機能

*村瀬 潤1日比野 優子1常田 岳志2大久保 卓2荒井 美和2林 健太郎2酒井 英光2長谷川 利拡2 (1.名古屋大学大学院生命農学研究科、2.農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター)

キーワード:水田土壌、原生生物、原生動物、メタン酸化、食物連鎖

メタン酸化は湿地生態系からのメタン放出を左右する鍵反応である。メタン酸化細菌はメタンを酸化するだけでなく増殖のための炭素源として利用する。いったんメタン酸化細菌に同化されたメタン炭素はメタン酸化細菌以外の微生物に利用可能である。本発表では、水田土壌におけるメタン酸化が駆動する微生物食物連鎖の構造とその潜在的機能について報告する。安定同位体プロービング法による解析により、メタンの炭素はメタン酸化細菌だけでなく、非メタン酸化細菌、捕食性原生生物(原生動物)、細菌捕食性線虫に利用されることが明らかとなった。また、T4型ファージのカプシド遺伝子へのメタン炭素の取り込みも示された。これらの結果から、いったんメタン酸化細菌に同化されたメタンは、クロスフィーディング、捕食、ウイルス感染・溶菌を含む土壌の微生物食物連鎖に結びついていると推察された。水田生態系における活発なメタン酸化の場である水稲根圏でメタン酸化微生物食物連鎖に関与する捕食性原生生物の群集構成は、非根圏の群集とは異なっており、大気CO2濃度の上昇に伴い変化した。このことはメタン酸化食物連鎖における捕食-非捕食関係の多様性を示唆している。原生生物はその選択的捕食作用により、メタン酸化細菌群集構造を左右するとともに、表層土壌におけるメタン酸化活性に影響を与える可能性が示唆された。これら一連の結果は、水田土壌のメタンの動態における微生物間相互作用の重要性を示している。