11:45 〜 12:00
[MIS19-11] 東アジアの蛇紋岩土壌における元素組成・鉱物組成の多様性
キーワード:土壌、蛇紋岩
【目的】蛇紋岩は超塩基性岩の一種で, Mgや重金属元素に富む苦鉄質の易風化性鉱物(蛇紋石・タルク) を主成分とする岩石である。この元素・鉱物組成は地殻の平均組成と著しく異なるため, 火山フロントに沿って点状分布している蛇紋岩地帯では, 特殊な植物群落が成立する。一方で, 蛇紋岩は他の母材に比べ風化作用を受け変質しやすく, 東アジアの幅広い気候条件下では, 多様な蛇紋岩土壌が生成・分布している。しかし, これまで東アジア広域多地点の蛇紋岩土壌の発達段階, 元素組成や鉱物組成について, 包括的に比較した研究はなく, 蛇紋岩土壌の発達の全容は明らかではないのが現状である。そこで本研究では, 緯度・標高に幅のある, 日本, マレーシア, インドネシアの蛇紋岩地帯8地点から岩石および層位別土壌試料を採取し, 元素組成および鉱物組成における多様性を明らかにするとともに, 東アジアにおける蛇紋岩土壌の発達の実態を解明することを目的とした。
【方法】緯度の高いほうから順に, 北海道・天塩, 京都府・大江山, 高知県・円行寺, マレーシア・キナバル山, インドネシア・クアロで標高1,000 m以下の地点, キナバル山の高標高地点の試料 (1,700 m, 2,700 m, 3,100 m) を採取した。この試料計39点について, 湿式分解‐AAS/ICP-AES分析およびXRFによる主要元素 (Na, K, Ca, Mg, Fe, Al, Ni, Cr, Mn, Ti, Si) の全量分析と, 1, 10-フェナントロリンを用いた全Fe量あたりのFe(Ⅱ)割合の測定, さらにはDCB抽出によるFed濃度の測定を行った。また, 岩石試料と土壌の粘土画分について, XRDを用いた鉱物同定を行った。さらに, 元素組成を変数として主成分分析を行った。
【結果と考察】岩石および土壌のいずれの試料においてもSiO2, MgO, Fe2O3量が7~9割を占めていた。岩石試料では, SiO2, MgO, Fe2O3量が96±0.8%と大部分を占め, それらの重量比もおよそ8:5:1で, 主要構成元素組成に大きな地域間の差は確認されなかった。一方土壌では, SiO2 (5%~45%), MgO (0%~40%), Fe2O3 (15%~80%) とそれぞれの値域が非常に幅広く, 類似標高ではより低緯度, 同緯度 (キナバル山) ではより低標高に位置するほど, Si, Mgの減少とFeの増加する傾向が見られた。さらにFeの存在形態に着目すると, 岩石では0.3以上であったFe(Ⅱ)の割合が, 土壌では0.2から0.01にまで減少する一方で, 岩石で12±1.5 g kg-1とごく微量であったFedが, 土壌では40から200 g kg-1にまで増加した。加えて元素の主成分分析を行った結果, 第一主成分はSi, Mgが正に, Fe, Ni, Cr, Mnが負に大きく負荷していた。これらは土壌の発達に伴い大きく増減したSi, Mg, Feと, 蛇紋岩に特徴的に見られる重金属であることから, 第一主成分は蛇紋岩土壌の発達を示す要素であると結論づけた。また, 第二主成分はNa, K, Al, Tiが負に大きく負荷していた。これらの元素は岩石よりも土壌に多く含まれ, 中でも日本の表層土壌で多い傾向が見られた。日本には偏西風により, 石英や長石, 雲母類を含む大気降下物が飛来し, これらの鉱物にはNa, K, Al, Tiが含まれている。そのため, 第二主成分は混入物の存在を示す要素であると考えられ, 鉱物同定の結果, 第二主成分得点が大きい日本の試料では, 造岩鉱物に加えて石英と雲母の存在が確認された。さらに, 岩石の主要な鉱物は蛇紋石であったが, 比較的未発達な土壌では造岩鉱物やクロライトが見られ, 土壌の発達とともにこれらの鉱物は減少, 中間種鉱物に変化するとともに, 粘土中の鉄酸化物の割合が90%にまで増加した。このように, 東アジアの蛇紋岩土地帯では, 母材が同種の岩石であるにも関わらず, 気候の違いを反映して土壌の発達程度が異なり, 地域特有の混入物も加わって, 母岩とは大きく異なりかつ多様な元素組成・鉱物組成を持つ土壌が分布していることが明らかとなった。
【方法】緯度の高いほうから順に, 北海道・天塩, 京都府・大江山, 高知県・円行寺, マレーシア・キナバル山, インドネシア・クアロで標高1,000 m以下の地点, キナバル山の高標高地点の試料 (1,700 m, 2,700 m, 3,100 m) を採取した。この試料計39点について, 湿式分解‐AAS/ICP-AES分析およびXRFによる主要元素 (Na, K, Ca, Mg, Fe, Al, Ni, Cr, Mn, Ti, Si) の全量分析と, 1, 10-フェナントロリンを用いた全Fe量あたりのFe(Ⅱ)割合の測定, さらにはDCB抽出によるFed濃度の測定を行った。また, 岩石試料と土壌の粘土画分について, XRDを用いた鉱物同定を行った。さらに, 元素組成を変数として主成分分析を行った。
【結果と考察】岩石および土壌のいずれの試料においてもSiO2, MgO, Fe2O3量が7~9割を占めていた。岩石試料では, SiO2, MgO, Fe2O3量が96±0.8%と大部分を占め, それらの重量比もおよそ8:5:1で, 主要構成元素組成に大きな地域間の差は確認されなかった。一方土壌では, SiO2 (5%~45%), MgO (0%~40%), Fe2O3 (15%~80%) とそれぞれの値域が非常に幅広く, 類似標高ではより低緯度, 同緯度 (キナバル山) ではより低標高に位置するほど, Si, Mgの減少とFeの増加する傾向が見られた。さらにFeの存在形態に着目すると, 岩石では0.3以上であったFe(Ⅱ)の割合が, 土壌では0.2から0.01にまで減少する一方で, 岩石で12±1.5 g kg-1とごく微量であったFedが, 土壌では40から200 g kg-1にまで増加した。加えて元素の主成分分析を行った結果, 第一主成分はSi, Mgが正に, Fe, Ni, Cr, Mnが負に大きく負荷していた。これらは土壌の発達に伴い大きく増減したSi, Mg, Feと, 蛇紋岩に特徴的に見られる重金属であることから, 第一主成分は蛇紋岩土壌の発達を示す要素であると結論づけた。また, 第二主成分はNa, K, Al, Tiが負に大きく負荷していた。これらの元素は岩石よりも土壌に多く含まれ, 中でも日本の表層土壌で多い傾向が見られた。日本には偏西風により, 石英や長石, 雲母類を含む大気降下物が飛来し, これらの鉱物にはNa, K, Al, Tiが含まれている。そのため, 第二主成分は混入物の存在を示す要素であると考えられ, 鉱物同定の結果, 第二主成分得点が大きい日本の試料では, 造岩鉱物に加えて石英と雲母の存在が確認された。さらに, 岩石の主要な鉱物は蛇紋石であったが, 比較的未発達な土壌では造岩鉱物やクロライトが見られ, 土壌の発達とともにこれらの鉱物は減少, 中間種鉱物に変化するとともに, 粘土中の鉄酸化物の割合が90%にまで増加した。このように, 東アジアの蛇紋岩土地帯では, 母材が同種の岩石であるにも関わらず, 気候の違いを反映して土壌の発達程度が異なり, 地域特有の混入物も加わって, 母岩とは大きく異なりかつ多様な元素組成・鉱物組成を持つ土壌が分布していることが明らかとなった。