JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] [JJ] 生物地球化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS19-P04] 安定同位体を指標に用いた酸化的水圏環境における過飽和メタンの起源解明

*三好 友子1角皆 潤1中川 書子1鋤柄 千穂1伊藤 昌稚1小松 大祐2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.東海大学)

キーワード:メタン、炭素同位体、水素同位体

大気中のCH4は代表的な温室効果ガスの1つであるが、その発生源(供給源)や挙動については未解明な部分が多い。水圏環境はCH4の主要発生源となっており水圏から大気へのCH4放出量の変化は、大気中のCH4濃度を激変させるポテンシャルがある。したがって水圏におけるCH4の起源や挙動を正確に理解することは非常に重要である。
CH4は一般に嫌気的環境で生成され、好気的環境で酸化分解されるという特徴をもつ。しかし先行研究では、酸化的な海洋や湖沼水中でも、CH4が大気平衡に対して過飽和に溶存している例が多数散見されている。この現象はmethane paradoxと呼ばれ、原因を特定するため様々な研究が行われてきた。
本研究では、酸化的な水圏環境で過飽和化しているCH4の起源を特定するため、琵琶湖と伊勢湾・三河湾をフィールドとして、水柱中の溶存CH4の安定同位体比(δ13CとδD)を指標に用いることでCH4の起源と水圏環境における挙動を解明することに挑戦した。酸化的な水環境試料に溶存するCH4について、そのδ13Cを指標として利用した研究は過去に複数存在したが、δDを用いた研究はほとんどなかった。しかしδ13CとδDの両方を指標として利用することで、生成後の分解の進行に関わらず、その起源を特定することができる可能性がある。そこで本研究は、δ13CとδDの両方を同時に定量し、この酸化の進行を補正したΔ(2,13)(=δD-11×δ13C)を定義し、指標として利用した。
表層水の過飽和をもたらすCH4の起源としては、①河川からの流入、②湖底堆積物からの供給、③沈降粒子から供給、の3つの可能性を考え、それぞれについて同位体比を定量化し水柱のCH4と比較した。その結果、同位体比の解析から琵琶湖表層で過飽和となっているCH4は、河川からの流入によって供給されている可能性が高いことが分かった。一方、伊勢湾・三河湾のCH4の起源は両者間で異なり、伊勢湾については琵琶湖同様流入河川からの供給である可能性が高いものの、三河湾については沿岸の海底堆積からの流入がその起源となっている可能性が高いものと推論した。