JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] [JJ] 生物地球化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS19-P14] 人工マクロポアの導入が土壌有機物の損失に与える影響

*森 也寸志1霜井 真彩1金子 信博2藤江 幸一2 (1.岡山大学大学院環境生命科学研究科、2.横浜国立大学大学院環境情報研究院)

キーワード:マクロポア、浸透、炭素貯留

土壌には大量の有機物が存在しているが,過度な耕耘や強雨による表土流出でその量は減少し続けている.これまでに人工マクロポアを用いると水分や有機物の下方浸透効果があることが確認された.しかし,人工マクロポアが毛管力の補助や空気の流入経路となり,蒸発促進や過度な有機物分解が起こる懸念もあり,本研究では人工マクロポアの導入が過剰な水分減少や有機物損失に与える影響を評価した.
 豊浦標準砂を30cmの鉛直カラムに入れ,有機物として500mg/L安息香酸溶液と500倍に希釈した無機塩類(N:P:K=6:10:5)の混合液を均一に分布させた.不耕起区と耕起区,人工マクロポア区の3つの区を設け,人工マクロポア区には20cmのグラスファイバーを挿入し,耕起区は3日ごとに表層10cmを耕耘した.不耕起区には特別な処理は行わなかった.あえて微生物活性を促すため,30℃に設定したインキュベーター内で2週間管理した.3日ごとに5cmの層ずつにカラムを解体し,各試料の有機物量,含水比,EC,蒸発量を計測した.
 結果的に有機物量の分布に関して,不耕起区では下方浸透型の分布となり最も貯留効果が高く,耕起区では耕耘を行った表層から10cmまでの層で激しい分解が見られた.一方,マクロポア区では3,6日目の5~15cmの層で分解を免れている層が見られた.また,実験最終日のカラム内総安息香酸量は不耕起区>マクロポア区>耕起区となっており,マクロポア区で過剰な分解は見られなかった.水分量に関して,マクロポア区では不耕起区とほぼ同じ含水比となり,マクロポア挿入部からの過剰な蒸発は見られなかった.これは蒸発量の結果からも確認することができた.栄養塩類は分解促進の原因になるが,マクロポア区は耕起区よりも表層の塩類濃度が低く,栄養塩類の集積に大きく寄与しないことが明らかになった.
 3区の比較から,マクロポア区は耕起区ほど有機物の分解を受けておらず,分解に抵抗を見せる層も見られた.また水分は不耕起区とほぼ同量保持しており,保水性を十分維持できている.さらに耕起区ほど栄養塩類の集積に過剰に寄与することもなかった.これらのことから,人工マクロポアの導入は有機物や水分の保持を行うものの,有機物や水分の過剰な損失にはつながらないという結果が得られた.