JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] [JJ] 南北両極のサイエンスと大型研究

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:中村 卓司(国立極地研究所)、杉本 敦子(北海道大学 北極域研究センター)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)、座長:末吉 哲雄(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、座長:中村 卓司(国立極地研究所)

16:45 〜 17:00

[MIS21-06] 100万年超を目指した深層アイスコア掘削と気候復元研究

*川村 賢二1,2,3アイスコア コンソーシアム (1.情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.総合研究大学院大学、3.海洋研究開発機構)

キーワード:南極氷床コア、気候変動、氷期・間氷期サイクル

国立極地研究所およびドームふじアイスコアコンソーシアム(http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/)を中心とし た研究者グループは、東南極ドームふじ近傍において80 万年(現存最古のドーム C コア)を大きく超える年代のアイスコア(仮称:第3期ドームふじ氷床コア)の掘削を提案している。この目的に向け、第IX期南極地域観測事業 重点研究観測(2016~2021年度)では、掘削候補地域における氷床表面及び内部層、底面状態の精緻な調査を行い、深層掘削地点を選定し、その上で深層コアの取得に向けたパイロット孔掘削とケーシング、浅層/中層掘削を目指している。第X期の早期に氷床底部までの掘削を完遂し、最古のアイスコアを取得することを提案する。

気候変動の歴史をさかのぼると、10万年周期の氷期サイクルが確立したのは約 80 万年前であり、それ以前、特に120万年前以前には4万年周期の氷期サイクルが卓越していた。地球システムの理解のためには、その時代の気候変動がなぜ4万年周期だったのか、また、なぜそれが10万年周期に遷移したのかなどを明らかにする必要がある。そのためには、気候変動の強制力として重要な温室効果ガスの変遷を100万年スケールで復元することが不可欠であり、それをなし得る媒体は南極のアイスコアしかない。また、南極(南大洋)は底層水の供給や二酸化炭素の貯蔵を規定する重要地域であり、アイスコアから得られる南極の古気候変動の情報は、全球の気候変動メカニズムの研究に不可欠である。

日本も参加しているアイスコア研究の国際組織 IPICS(PAGES, SCAR, IACS が支援する、アイスコア研究者・ 設営関係者で構成される組織)では、今後の大目標の一つとして、氷期・間氷期サイクルの卓越周期が変化した時代をカバーする150万年のアイスコアの掘削を挙げている。それへの貢献を視野に入れ、現ドームふじ基地近傍における新基地の建設を構想しつつ、第VIII期においては地上レーダー探査による底面環境の調査と掘削候補地域の大まかな選定を行ってきた。有力候補地域は現ドームふじ基地から約60km圏内にある。

第IX期から第X期にかけて、新たな深層コア掘削点を探るための雪氷学的調査を実施したうえで、掘削点を選定し、深層掘削を目指す。現在の最重要課題は掘削位置の選定である。氷床探査レーダーによる内部層、基盤地形、底面状態の解析をもとに、最適条件を満たす地点を探す。堆積環境や環境シグナル記録プロセスを押さえるための氷床表面の雪氷観測、候補地における浅層掘削やフィルン空気解析も必要である。

新たな深層掘削機やコア処理・分析機器の開発などの技術的課題や、燃料・物資の輸送や建設などの設営的課題を乗り越え、この世界的な重要課題に挑んでいく必要がある。