JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 A11 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、座長:岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

11:30 〜 11:45

[MIS23-04] 福井県日向湖における年縞堆積物の形成過程と近年の周期的変動

*瀬戸 浩二1北川 淳子2入澤 汐奈3香月 興太1山田 和芳4 (1.島根大学汽水域研究センター、2.福井県里山里海湖研究所、3.島根大学総合理工学部、4.ふじのくに地球環境史ミュージアム)

キーワード:日向湖、年縞、全イオウ濃度、周期的変化、太平洋十年規模振動

福井県三方郡美浜町に位置する日向湖は,1km2未満の小さな湖沼である.日向湖は,日向水道によって日本海と,嵯峨隧道によって水月湖と通じている.現在,嵯峨隧道は水門によって閉鎖されている.湖水の塩分は,海水に近いが,湖盆の水深が38mと深いため,底層水は夏季でも水温が低く,一年を通して無酸素状態である.
 日向湖で古環境変遷史を明らかにするために湖心付近において空気圧入式ピストンコアラーを用いて2本のコア(15HG-1C,2C)を,リミノスコアラーを用いて1本のコア(15HG-3C)の採取した.本発表では上部50cmで観察される明瞭なラミナ堆積物について形成過程を議論し,その結果で明らかとなった周期的な変動について報告する.
 ラミナ層準において軟X線吸収強度が高いラミナは,灰色を示している.これは降水性のラミナであることを示唆している.若狭地域の降水パターンを見ると,冬季の降雪期と夏季の梅雨期,台風期にそれぞれ降水のピークを示す.降雪期(12月〜1月)がもっとも高い降水量を示しているが,雪氷として流域に蓄積するため,流量は多くても流速は弱いと思われる.この時期は,細粒砕屑物の供給に寄与し,軟X線吸収強度の弱いラミナを形成するものと思われる.夏季の梅雨期(6月〜7月),台風期(8月〜9月)は,集中豪雨が起りやすく,速い流速を示していると思われる.これらの時期は,粗粒砕屑物の供給に寄与し,軟X線吸収強度の強いラミナを形成するものと思われる.強いラミナは良く観察すると2重に見える層準がある.これは梅雨期と台風期の両方に降水が起きたことを示唆している.これらのことから強いラミナの集合体は夏季を示し,弱いラミナは冬季を示すことになる.このラミナセットは1年を示す年縞と解釈できる.
 年縞の確認ができる約200年間に,全有機炭素(TOC)濃度は5回の増減のサイクル,TS濃度は10回の増減のサイクルが認められる.TS濃度のサイクルはおよそ20年周期で,周期的な海水準の変動に伴う海水の流入量の違いによる還元環境の変化に起因するものと思われる.おそらくこれの周期的変化は太平洋十年規模振動(PDO)に関係するものと思われる.また,TOC濃度は,およそ35年周期,堆積物フラックスはおよそ75年周期が見られた.