JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 A11 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、座長:岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

11:45 〜 12:00

[MIS23-05] 水月湖堆積物に記録された完新世後期災害史の種類・規模・頻度変動と、堆積環境変化との関係

*鈴木 克明1多田 隆治1入野 智久2山田 和芳3長島 佳菜4中川 毅5原口 強6五反田 克也7SG12/06 プロジェクトメンバー (1.東京大学、2.北海道大学、3.静岡県ふじのくに地球環境史ミュージアム 、4.JAMSTEC、5.立命館大学、6.大阪市立大学、7.千葉商科大学)

キーワード:水月湖、年縞、洪水、地震、完新世

洪水や地震などの災害が発生すると、多量の物質が堆積場に流入し、「イベント堆積物(イベント層)」を形成する。イベント堆積物は、観測や歴史記録を大きく超える時間スケールをカバーできる長期災害記録となるポテンシャルを有している。しかし、堆積物から災害現象の原因(たとえば、地震か洪水か)やその規模を識別する方法は確立していない。また、イベント層の堆積やその規模を決定する境界条件が変化する可能性があるため、周辺の堆積環境の変化も考慮する必要がある。本研究では、福井県水月湖の堆積物掘削コア(SG12)を用いて、観測と堆積物の対比に基づいて、過去7000年における強雨・洪水史の復元を試みた。その結果、水月湖堆積物への災害記録プロセスとして以下のことが明らかになった。
・河川起源懸濁物の堆積フラックスは強雨頻度に比例する。
・明灰色イベント層が洪水に伴って堆積し、その厚さは洪水時の総雨量を反映する。
さらに、河川起源細粒砕屑物(洪水起源イベント層の主構成要素)および他の堆積物構成要素のフラックス変動を主要元素組成およびその重回帰分析によって復元し、水月湖堆積物から得られている他の環境変動記録と比較した.。その結果、災害記録の定量性に影響を与えるローカルな環境変動として、以下のことが明らかになった。
・明灰色イベント層の堆積後、砕屑物フラックスが上昇する場合があるが、100年程度の時間スケールで元の水準にまで低下する。これは、斜面崩壊に伴う侵食ポテンシャルの上昇と、その後の植生の回復を反映していると考えられる。
・歴史地震と対比可能なイベント層の堆積後、砕屑物フラックスの上昇が1000年程度の時間スケールで継続する。このことは断層運動に伴う地形変動を反映していると考えられる。
本発表に関連して、観測と堆積物の比較による強雨・洪水プロキシ開発の詳細についてH-SC07セッションで、完新世後期の災害史復元結果と広域気候変動との関係についてM-IS06セッションで発表する。