JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

14:00 〜 14:15

[MIS23-08] 過去70万年間の南極と南大洋における年平均日射量に対する温度変動の応答

★招待講演

*植村 立1ドームふじ氷床コア 研究グループ2 (1.琉球大学 理学部、2.国立極地研究所他)

キーワード:アイスコア、d-excess、氷期間氷期サイクル

日射量変動に対して気温がどのように応答するかは、氷期-間氷期サイクルの気候変動を理解するために重要である。ミランコビッチ説では、2.3万年周期の歳差運動が日射量の季節変動に影響をあたえることで、氷床量変動を引き起こし、フィードバックメカニズムを引き起こすとされている。これに対して、4万年周期の地軸の傾きの変動は年平均の日射量に影響を与え、南極のような高緯度地域の気温にローカルな影響を与えている可能性がある。南極の気温変動(δD)は、全球の二酸化炭素濃度(CO2)の変動と良い相関があり、南極海とその周辺海域の温度変動が炭素循環に影響を与えている可能性が多く指摘されている。しかし、ローカルな日射量変動が南極の気温と南極海の表面水温にどの程度の地域的な影響を与えているのかは未解明である。
本研究では、南極ドームふじで掘削された第二期ドームふじアイスコア(DF2 core)のδDとd-excessを用いて、過去70万年間の南極の気温(Tsite)と水蒸気起源温度(Tsource)を復元した。復元したTsourceを評価するために、水蒸気起源海域の海底コアの表面海水温の平均値(17データ)と比較したところ、振幅の定量値も含めて、過去30万年間にわたって、よく一致していた。Tsourceは、CO2と高い相関があり、南極海とその周辺海域の水温が世界的な炭素循環に強い影響を与えている説を支持している。一方、Tsiteには強い4万年周期の変動があり、年平均日射量の変動の影響を受けている可能性を示唆している。この4万年周期帯については、TsiteはCO2よりも2 kyr先行し、TsourceはCO2よりも1 ky遅れて変動していた。これらの結果は、南極の気温がCO2に対して数百年早く変動を始める原因の一つが、年平均日射量の影響であることを示唆している。また、TsiteとTsourceは、年平均日射量の変動に対して平均4-7kyr遅れて変動している。この位相差は、日射量が気温や水温を直接コントロールしているのではなく、地軸の傾きによって変調された気候フィードバックメカニズム(水蒸気輸送強度の変動等)が関与していることを示唆している。