10:15 〜 10:30
[MIS23-24] 前期~中期中新世を通じた赤道太平洋温度躍層の発達史
キーワード:東赤道太平洋、中新世、温度躍層、浮遊性有孔虫、酸素同位体比
現在の赤道太平洋域は東西で温度躍層の勾配が顕著である.一方鮮新世の温暖期では,現在よりも温度躍層は深く,東西の勾配は減少していた(e.g., Wara et al., 2005; Ford et al., 2015).赤道太平洋域の温度躍層は全球の気候と密接に関連するため,長期的な温度躍層の発達史を理解することは重要である.しかしながら,これまで温度躍層の復元は後期中新世までに限られ(e.g., LaRiviere et al., 2012; Zhang et al., 2014),前期~中期中新世については十分に検討されていなかった.本研究では,南極氷床や低緯度海峡と関連する,前期~中期中新世を通じた赤道太平洋の温度躍層発達史の解明を目指し,浮遊性有孔虫Paragloborotalia siakensis(表層種)およびDentoglobigerina venezuelana(深層種)の酸素同位体比を分析した.
東赤道太平洋域の堆積物試料(IODP Site U1337)から得られた両種の酸素同位体比の差に基づくと,鉛直温度勾配は中新世温暖期(16.9~14.7 Ma)を通じて増加し,東南極氷床拡大(約13.9 Ma)を通じて減少した.それぞれ東赤道の表層海水温上昇,低下を反映していると考えられる.東南極氷床拡大に伴う表層海水温の低下は,近傍の IODP Site U1338におけるアルケノン海水温復元(Rousselle et al., 2013),湧昇流の強化(Holbourn et al., 2014)と整合的である.さらに,西赤道太平洋域(ODP Site 806)の浮遊性有孔虫酸素同位体比(Corfield and Cartlidge, 1993)と比較した結果,西赤道の鉛直温度勾配は東赤道よりも一貫して小さく,前期~中期中新世を通じた赤道湧昇の存在が示唆された.
また,東西赤道太平洋の酸素同位体比から2つの斜勾配を求め,温度躍層の深度と勾配について推定した.16.7~15.7 Ma にかけて温度躍層は浅化する一方,16.5~13.8 Ma については勾配が緩やかになった.低緯度海峡(インドネシア海峡,中央アメリカ海峡)の閉鎖(17~15 Ma)(Potter and Szatmari, 2009),南極氷床量の減少(16.4~13.9 Ma)(Holbourn et al., 2007; Tian et al., 2013)がそれぞれ温度躍層の浅化,勾配に影響した可能性がある.後期中新世以降の長期的な温度躍層の浅化(LaRiviere et al., 2012)と合わせると,中新世を通じた赤道温度躍層の浅化が示唆された.
東赤道太平洋域の堆積物試料(IODP Site U1337)から得られた両種の酸素同位体比の差に基づくと,鉛直温度勾配は中新世温暖期(16.9~14.7 Ma)を通じて増加し,東南極氷床拡大(約13.9 Ma)を通じて減少した.それぞれ東赤道の表層海水温上昇,低下を反映していると考えられる.東南極氷床拡大に伴う表層海水温の低下は,近傍の IODP Site U1338におけるアルケノン海水温復元(Rousselle et al., 2013),湧昇流の強化(Holbourn et al., 2014)と整合的である.さらに,西赤道太平洋域(ODP Site 806)の浮遊性有孔虫酸素同位体比(Corfield and Cartlidge, 1993)と比較した結果,西赤道の鉛直温度勾配は東赤道よりも一貫して小さく,前期~中期中新世を通じた赤道湧昇の存在が示唆された.
また,東西赤道太平洋の酸素同位体比から2つの斜勾配を求め,温度躍層の深度と勾配について推定した.16.7~15.7 Ma にかけて温度躍層は浅化する一方,16.5~13.8 Ma については勾配が緩やかになった.低緯度海峡(インドネシア海峡,中央アメリカ海峡)の閉鎖(17~15 Ma)(Potter and Szatmari, 2009),南極氷床量の減少(16.4~13.9 Ma)(Holbourn et al., 2007; Tian et al., 2013)がそれぞれ温度躍層の浅化,勾配に影響した可能性がある.後期中新世以降の長期的な温度躍層の浅化(LaRiviere et al., 2012)と合わせると,中新世を通じた赤道温度躍層の浅化が示唆された.