JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月23日(火) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、座長:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

10:15 〜 10:30

[MIS23-24] 前期~中期中新世を通じた赤道太平洋温度躍層の発達史

*松井 浩紀1西 弘嗣2黒柳 あずみ2林 広樹3池原 実4高嶋 礼詩2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.東北大学学術資源研究公開センター、3.島根大学総合理工学部、4.高知大学海洋コア総合研究センター)

キーワード:東赤道太平洋、中新世、温度躍層、浮遊性有孔虫、酸素同位体比

現在の赤道太平洋域は東西で温度躍層の勾配が顕著である.一方鮮新世の温暖期では,現在よりも温度躍層は深く,東西の勾配は減少していた(e.g., Wara et al., 2005; Ford et al., 2015).赤道太平洋域の温度躍層は全球の気候と密接に関連するため,長期的な温度躍層の発達史を理解することは重要である.しかしながら,これまで温度躍層の復元は後期中新世までに限られ(e.g., LaRiviere et al., 2012; Zhang et al., 2014),前期~中期中新世については十分に検討されていなかった.本研究では,南極氷床や低緯度海峡と関連する,前期~中期中新世を通じた赤道太平洋の温度躍層発達史の解明を目指し,浮遊性有孔虫Paragloborotalia siakensis(表層種)およびDentoglobigerina venezuelana(深層種)の酸素同位体比を分析した.
東赤道太平洋域の堆積物試料(IODP Site U1337)から得られた両種の酸素同位体比の差に基づくと,鉛直温度勾配は中新世温暖期(16.9~14.7 Ma)を通じて増加し,東南極氷床拡大(約13.9 Ma)を通じて減少した.それぞれ東赤道の表層海水温上昇,低下を反映していると考えられる.東南極氷床拡大に伴う表層海水温の低下は,近傍の IODP Site U1338におけるアルケノン海水温復元(Rousselle et al., 2013),湧昇流の強化(Holbourn et al., 2014)と整合的である.さらに,西赤道太平洋域(ODP Site 806)の浮遊性有孔虫酸素同位体比(Corfield and Cartlidge, 1993)と比較した結果,西赤道の鉛直温度勾配は東赤道よりも一貫して小さく,前期~中期中新世を通じた赤道湧昇の存在が示唆された.
また,東西赤道太平洋の酸素同位体比から2つの斜勾配を求め,温度躍層の深度と勾配について推定した.16.7~15.7 Ma にかけて温度躍層は浅化する一方,16.5~13.8 Ma については勾配が緩やかになった.低緯度海峡(インドネシア海峡,中央アメリカ海峡)の閉鎖(17~15 Ma)(Potter and Szatmari, 2009),南極氷床量の減少(16.4~13.9 Ma)(Holbourn et al., 2007; Tian et al., 2013)がそれぞれ温度躍層の浅化,勾配に影響した可能性がある.後期中新世以降の長期的な温度躍層の浅化(LaRiviere et al., 2012)と合わせると,中新世を通じた赤道温度躍層の浅化が示唆された.