JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)

[MIS23-P01] 海洋表層環境が浮遊性有孔虫(G. bulloides)の殻形成に与える影響の評価

★招待講演

*岩崎 晋弥1木元 克典2佐々木 理3鹿納 晴尚3 (1.産業技術総合研究所、2.海洋研究開発機構、3.東北大学総合学術博物館)

キーワード:浮遊性有孔虫、海洋酸性化、殻密度

海洋酸性化は炭酸塩生物の石灰化を阻害し、炭酸塩生物を代表する浮遊性有孔虫の殻形成にも影響しうる。酸性化による有孔虫殻への影響の理解は、現在だけでなく過去の酸性化イベントで炭酸塩生物に生じた影響を復元する上で重要である。従来の研究では、酸性化が有孔虫の殻状態に与える影響を評価する指標としてサイズ標準化殻重量が利用されてきた。しかし、この手法では殻の厚さや房室数、殻密度などの情報が得られないため、酸性化が有孔虫に及ぼす影響について断片的な理解にとどまってきた。本研究は北太平洋亜寒帯域を東西に横断する6地点で鉛直多層引きプランクトンネット観測(採取水深:0-50, 50-100, 100-150, 150-200 m)を実施し、この海域で主要に産出する浮遊性有孔虫G. bulloidesを採集した。また有孔虫の殻状態を定量的かつ多角的に評価する手法としてマイクロフォーカスX線CTスキャナ(MXCT)による殻内部構造の観察および殻密度の測定を導入し、G. bulloidesの殻状態と現場海水環境との比較を初めて実施した。
 測定の結果、G. bulloidesの殻は生息環境に応じて異なるタイプの殻を形成すること、従来利用されてきたサイズ標準化殻重量指標は殻の厚さを表現しており、殻密度変動を表現していないこと、そして現場海水の炭酸塩飽和度と殻密度が相関することが示された。これらの結果は、過去から現在を通して海洋酸性化が浮遊性有孔虫の殻形成に与える影響を評価するにはMXCTによる殻密度測定が有効であることを示唆している。