JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)

[MIS23-P08] トゥファに記録される炭酸凝集同位体の年変化

*雨川 翔太1加藤 大和1狩野 彰宏1 (1.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:凝集同位体、トゥファ、温度計

炭酸塩鉱物とリン酸の反応で生じた二酸化炭素の炭酸凝集同位体は,母液の同位体組成とは無関係に,鉱物沈殿時の温度のみに依存するとされる (Ghosh et al. 2006)。しかし,動的効果などの影響により,酸素同位体比などと同様に理論的平衡値からずれるやすいことも知られている。炭酸凝集同位体の非平衡は,例えば石筍上の滴下水のようにCO2脱ガスが鉱物沈殿を誘発するようなケースで起こりやすく,酸素・炭素同位体比の非平衡を伴う。本研究では,酸素・炭素同位体比が同位体平衡にあるトゥファ堆積物の炭酸凝集同位体を測定した。測定対象は愛媛県西予市城川町および岡山県新見市下位田の同一地点で1999年12月から2000年12月までの期間に毎月採集した試料である。各々の採集時には水温・水質観測も行っている (Kano et al., 2003; Kawai et al., 2006)。分析に用いたのは,各々のサンプルの表面0.5mmの部分を削ったものであり,トゥファの典型的な成長速度 (4 mm/year) を考慮すると,約1.5ヶ月の期間をカバーすると思われる。
分析は70℃でのリン酸反応で生じた二酸化炭素を液体窒素と-10℃に冷却しカラムを用いて生成し,九州大学に配備されているMAT253を用いて測定した。なお,測定にはHe et al. (2012) のバックグラウンド補正を適用し,値はDennis et al. (2011) のabsolute reference frameに投影したものを用いた。測定誤差は0.015パーミルであり,温度に換算すると約3℃に相当する。また,合成方解石試料の測定結果をもとに作成した温度換算式はGuo et al. (2009) が提示した式に極めて近かった。
愛媛県の結果は3.7〜20.9℃の幅を示し,明確な年変化を示した。これは,試料採集地点での水温変化幅 (5〜19℃) と極めて整合的であった。岡山県の測定結果も同様に水温観測記録と整合的であり,トゥファの炭酸凝集同位体は温度計として利用できることがわかった。トゥファ堆積場でもCO2脱ガスが起こっているが,それが凝集同位体の非平衡につながらないようである。おそらく水のpHが8.3付近であることから,動的効果が起こりにくいものと考えられる。