JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)

[MIS23-P14] 福島県猪苗代湖のイベント堆積物

*井内 美郎1 (1.早稲田大学人間科学学術院)

キーワード:猪苗代湖、イベント堆積物、洪水

福島県中央部に位置する猪苗代湖湖底には,厚さ数ミリメートルの明暗の縞からなるバーコード状の堆積物が分布している.そして,その中に数種類のイベント堆積物を多数挟在している.一つ目は降下火山灰層であり,姶良Tn火山灰や沼沢―沼沢湖テフラなどが確認されている(廣瀬ほか;2014).二つ目は地震活動に起因する混濁流堆積物で東北地方太平洋沖地震によるものや大正関東地震によるものが確認されている(行木ほか;2015).三つ目は下部が白色で上部が暗褐色を示す厚さ数センチメートルの層である.四つ目は色調的には特徴を示さないが,他の層準と比べてやや粗粒な層準である.今回,検討対象とした層準は三番目のイベント層で,一般に下部の白色の部分で逆級化を示し,上部の暗褐色の部分で正級化を示す洪水堆積物に特徴的な構造を示す.この層準について,メタリックファインフィルターを用いて粒子をふるい分け,それぞれの構成粒子を調べた.その結果,白色の部分は石英・長石を主体とし,火山ガラスを含むものであった.一方,暗褐色の部分には白色層と同様の粒子のほか,特徴的に暗褐色の菱鉄鉱を含んでいることが明らかになった.この層準のうち暗褐色の部分は,軟X線写真で黒く映る部分であるが,軟X線の透過が悪い原因は菱鉄鉱の存在によると考えられる.このイベント層の堆積メカニズムとして,以下のモデルを提案する.安達太良山頂北西にある沼の平旧火口にはかつて層厚数十メートルの湖沼堆積物が存在したとされている(阪口;1995).ここに菱鉄鉱を含む火山噴出物が堆積し,湖沼堆積物を形成していた.猪苗代湖周辺域は豪雪地域として有名であるが,寒冷期には現在よりさらに多くの降雪があったと想定される.そのような時期にも春の雪解け期はあったと想定され,大量の雪解け水が流入することによって,火口壁が決壊し,湖沼堆積物を形成していた土砂が猪苗代湖に洪水堆積物として流れ込んだと考えられる.