[MIS23-P21] 石灰質ナンノ化石に基づくインド洋,大西洋,および東部赤道太平洋における前期–中期中新世の表層海洋環境変遷
キーワード:石灰質ナンノ化石、中新世、湧昇、成層構造、ODP
前期-中期中新世は,いくつかの氷床拡大イベント (Mi-events)を伴うものの,全球的に氷床量が少なく,海洋環境は温暖な時期であったとされる時代である(Zachos et al., 2001).その温暖な傾向は,約17–15 Maの中期中新世最温暖期まで続いたが,それ以降は深層水温の低下 (Billups and Schrag, 2002)や,南大洋の熱塩循環と南極環流の強化 (Shevenell et al., 2008) などに伴って,段階的に氷河作用が進行していったことが知られている.本研究では,南大西洋,インド洋および東部赤道太平洋において実施された国際深海掘削計画(ODP)によって得られた深海底コア中の石灰質ナンノ化石群集の変化に基づき,表層海洋環境の推定を試みた.本研究で取り扱った深海底コアは,Okada and Bukry (1980)のCN 1帯(Triquetrorhabdulus carinatus Zone)から,CN 5a帯(Coccolithus miopelagicus Subzone)までの化石帯に相当し,その年代は約23 Maから約12 Maである.検討したコアから産出する分類群のうち,主要な分類群は Reticulofenestra属,Cyclicargolithus属,そしてDiscoaster属である.このうち,Reticulofenestra 属とDiscoaster 属の相対産出頻度は逆相関を示すケースが多く見受けられた.Reticulofenestra属が多く,Discoaster属が少ない層準は,上部透光層における豊富な栄養塩量と強い表層循環を,その逆は乏しい栄養塩量と安定した成層構造の存在を示唆するものと考えられ (佐藤・千代延,2009など),それぞれδ18O値が高い層準と低い層準に対応するようである.各地点に共通した群集変化の傾向として,約21 Maおよび15 MaにおけるReticulofenestra 属の増加とDiscoaster 属の減少,約16 MaにおけるReticulofenestra 属の減少とDiscoaster 属の増加が確認された.これらの群集変化は,それぞれMi-1aの開始,中期中新世最温暖期の終了,Mi-2の終了 (Billups et al., 2002)とほぼ同時期であり,主として南極氷床の活動の影響を受けていると考えられる.また,それぞれの海域の石灰質ナンノ化石群集は,地域的な表層環境変動,たとえば赤道太平洋およびインド洋西部では,湧昇流などの影響を受けていたと考えられる.
引用文献
Billups, K., Channell, J. E. T., and Zachos, J., 2002. Paleoceanography, 17(1).
Billups, K., and Schrag, D. P., 2002. Paleoceanography, 17(1).
Okada, H. and Bukry, D., 1980. Marine Micropaleontology, 5, 321–325.
佐藤時幸,千代延俊(Sato, T. and Chiyonobu, S.), 2009. 化石(Fossils), 86, 12–19.
Shevenell, A. E., Kennett, J. P. and Lea, D. W., 2008.Geochemistry, Geophysics, Geosystems,9, Q02006.
Zachos, J., Pagani, M., Sloan, L., Thomas, E. and Billups, K., 2001. Science, 292, 686–693.
引用文献
Billups, K., Channell, J. E. T., and Zachos, J., 2002. Paleoceanography, 17(1).
Billups, K., and Schrag, D. P., 2002. Paleoceanography, 17(1).
Okada, H. and Bukry, D., 1980. Marine Micropaleontology, 5, 321–325.
佐藤時幸,千代延俊(Sato, T. and Chiyonobu, S.), 2009. 化石(Fossils), 86, 12–19.
Shevenell, A. E., Kennett, J. P. and Lea, D. W., 2008.Geochemistry, Geophysics, Geosystems,9, Q02006.
Zachos, J., Pagani, M., Sloan, L., Thomas, E. and Billups, K., 2001. Science, 292, 686–693.