JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] [JJ] 古気候・古海洋変動

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)

[MIS23-P32] 東シナ海男女海盆における最終氷期以降の珪質鞭毛藻群集変動

*西園 史彬1岡崎 裕典1 (1.九州大学 理学部 地球惑星科学科)

キーワード:珪質鞭毛藻、東シナ海、男女海盆、海表面水温

東シナ海は西部北太平洋に位置する縁辺海であり、黄海を含めると面積の70%以上が大陸棚を占める。南東には、最深部の水深が2000 m以上に達する背弧海盆である沖縄トラフが存在する。東シナ海の表層水塊は、主として長江の影響を受けた低塩分で低温かつ高栄養塩の大陸系混合水塊と黒潮の影響を受けた高塩分で高温かつ低栄養塩の黒潮系水塊の2つに大別される。珪質鞭毛藻は海生植物プランクトンで、生物源オパールの骨格を持つ。現在の海洋では、主にDictyocha属(主に熱帯・亜熱帯・温帯)とStephanocha属(主に極域・亜寒帯)の2属が生息している。このことから、海底堆積物試料中の珪質鞭毛藻化石の2属の比を取ることで、定性的な海表面水温指標となることが提案されている。
 本研究では東シナ海男女海盆における堆積物コア試料中の珪質鞭毛藻群集から、最終氷期以降の東シナ海の表層水温変化を復元した。研究に用いたピストンコア(KY07-04 PC01コア, 31°38.35’N, 128°56.64’E, 水深758 m)は、沖縄トラフ北部の男女海盆で採取された。同コア試料の年代モデルは、13 点の浮遊性有孔虫放射性炭素年代および鬼界アカホヤテフラにより構築されている(Kubota et al., 2010)。珪質鞭毛藻群集観察用のプレパラートを作成し、群集組成変化を調べた。出現した珪質鞭毛藻種は11種であった。KY07-04 PC01コアにおけるDictyocha/Stephanocha比から、最終氷期以降の男女海盆における、持続的な黒潮系水塊の勢力強化が示唆された。現在、黒潮続流域とアラスカ湾に多産するDictyocha epiodonの変動パターンは、最終氷期以降徐々に増加していた。代表的な亜寒帯種であるStephanocha speculumが最終氷期と退氷期の一次期に増加したことから、この時期の男女海盆に現在よりも低温・低塩分な表層水の影響があったことが伺える。ただし、熱帯から温帯まで広く分布しているDictyocha messanensisが、最終氷期から完新世後期まで、持続的に多く産出しているため、最終氷期や最終退氷期においても、男女海盆に黒潮系水塊が完全に流入しなくなるようなことは起こらなかった。