JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] [JJ] 海底~海面を貫通する海域観測データの統合解析

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:有吉 慶介(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、木戸 元之(東北大学 災害科学国際研究所)、稲津 大祐(東京海洋大学)、高橋 成実(防災科学技術研究所)

[MIS24-P02] GPS 音響結合方式による海底地殻変動観測で推定した平均海中音速の時間変化と CTD 等による実測値について

*松井 凌1木戸 元之2本荘 千枝2富田 史章1 (1.東北大学大学院理学研究科、2.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:海底測地、GPS/A 観測、海中音速、CTD 計測

GPS/音響測距結合方式 (GPS/A) は,GPS測位で船舶の位置を求めると同時に,音響測距で船舶と海底局の位置関係を求めることで海底地殻変動を検出する測位手法である.この手法では,3台以上の海底局で構成される海底局アレイの水平変位を音響測距1ショットごとに推定可能である.水平変位と同時に推定される往復走時残差の鉛直投影成分(鉛直走時遅延量=GNSS解析で使われる天頂遅延量に相当)は,海中平均音速の時間変化を反映する量である.鉛直走時遅延量は,海水温等の計測データから算出される海中音速のスローネスプロファイルを海面から海底まで積分することで実測値として得られる.Kido et al. (2008) では鉛直走時遅延量のGPS/A 推定値と実測値との比較を行い,少なくとも半日周期の変動については両者がよく一致することを示した.本研究では,その応用として次の2つの事例について調べた.
1つ目に,GPS/A 解析から推定される鉛直走時遅延量の短時間( ~1 h)スケールの変動についても海中音速変化を反映するかどうかを検証した.まず,XBT 計測を6分間隔で計1時間程度連続で行う短時間集中観測を実施し,得られた温度プロファイルから鉛直走時遅延量を算出した.各XBTのバイアス誤差を適切に補正し,GPS/A 解析による推定値との比較を行ったところ,短時間変化についても両者が整合した.よって, GPS/A解析により海中平均音速の短時間変化も推定可能であることが確かめられた.
2つ目に,CTD計測で得られる高精度な海中音速プロファイルを用いた海底上下変位の検出可能性について検証した。GPS/A解析における鉛直走時遅延量の絶対値には海底局の深度不確定性が含まれる.しかし,この深度不確定性に相当する鉛直走時遅延量はキャンペーン観測間で不変である.つまり,正しい音速を与えれば,キャンペーン観測間の鉛直走時遅延量の絶対値変化は,上下変位があった場合にのみ生じると考えられる.そこで,各観測点でCTDのup-castとdown-cast時の鉛直走時遅延量とGPS/Aの推定との違いがどの程度一致するかをみることで上下変位検出精度の推定を行った.CTDの温度誤差と計測時間誤差(有限の計測時間内の海中音速変化による実測値不確定性)を考慮したところ,およそ15 cmの精度で上下変位を検出可能であることがわかった.