JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT39] [JJ] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、座長:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、座長:市原 美恵(東京大学地震研究所)

16:40 〜 16:55

[MTT39-05] インフラサウンドの多地点観測によるリモートセンシング

*齋藤 耕1水本 聡1反町 玲聖1山本 真行1 (1.高知工科大学)

キーワード:インフラサウンド、雷、雷鳴、流星

はじめに
我々は、地震、津波、雷などの地球物理現象が波源となり発生するインフラサウンドの観測を行ってきた。地球物理現象には、年スケールで比較的高頻度で発生する現象からごく稀にしか発生しないものがある。それらの検出可能な強度の波の観測を含めた定常的なモニタリング観測に向けて現在、インフラサウンドセンサおよびカメラ、電波受信アンテナを多地点に設置した多地点アレイ観測システムによる総合的な観測を開始した。今回、これらにより同時観測された落雷および火球(流星)の観測結果および考察を報告する。

多地点観測
インフラサウンドセンサ (Chaparral Physics Model 25)、光学カメラ、電波受信アンテナを高知工科大学(香美市)、芸西天文学習館(芸西村)、みどりの時計台(大豊町)の三地点で2016年12月より多地点総合観測を行っている。みどりの時計台ではインフラサウンドと電波観測のシステムがあり、他二地点では全観測システムが定常的に稼働している。芸西、大豊の各機器の稼働状況はモバイル回線を通して本学で確認でき、ファイルの送受信も可能となっている。
今回、2016年12月13日に発生した落雷および2017年1月5日に観測した流星の観測結果について述べる。2016年12月13日18時59分に発生した落雷の音波は各観測点で観測されており、それらの時刻差から落雷位置と時刻を算出した。また、本学設置のカメラおよび各観測点の電波受信アンテナが、発光および電波を観測している。落雷地点より24 km離れた緑の時計台で振幅0.06 PaのN型大気圧力波形を検出した。
2017年1月5日22時33分に到来した流星により発生した音波は、二地点で観測された。芸西で振幅0.05 Paの衝撃波に類似した圧力波形を観測した。また、流星の大気圏突入の際に形成される電離柱により反射した電波(福井高専から定常出力)が二地点のアンテナで観測され、本学のカメラが流星を観測した。

結果および考察
落雷音波の各地点の観測時刻差により求めた落雷時刻と、アンテナが電波を観測した時刻に1秒のずれが生じた。これは、音速が一定かつ風向きが一様の仮定や、放電路の方向などの条件によるものと考えられる。また、これらは算出した落雷位置の精度誤差の要因となり、今回の解析では±300 mの誤差が考えられる。距離による音波振幅減衰は各地点のパワースペクトルにより算出した。落雷地点からの距離の差が最大で18 kmとなる本学および大豊では20 dBの差があった。
流星の大気圏突入により発生したインフラサウンドは芸西で周期1.53秒の衝撃波型の波形で観測された。イベントの前後10秒のパワースペクトルを比較し、後の方が10 Hz以下の低周波側が10 dB程度大きくなっていることを確認した。これは、衝撃波が通過した際、低周波の擾乱を主成分とする圧力波が検出されたと考えられる。本学設置のカメラでは3回ほどの爆発状の発光を確認しており、通常の流星よりも比較的規模が大きい火球と考えられる。物体が大気圏外からの突入で発生するインフラサウンドが観測されるのは非常に稀であり、定常的なリモートセンシングでなければ観測は非常に困難である。

まとめ
音波観測によるイベントの時刻および位置を算出する際、誤差要因として音速が大きく関係しているため、今後各観測点に温度センサーを設置し、気温の情報を取っていく必要がある。また、可聴域をセンシングすることで周波数減衰も確認することができる。定常的なリモートセンシングにより、非常に頻度の少ない地球物理現象の観測に成功した。今後も総合観測により様々な観測データとして蓄積していく。