JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT39] [JJ] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター)、市原 美恵(東京大学地震研究所)

[MTT39-P03] インフラサウンドの計測に向けたマイクアレイによる低周波検出実験

*藤本 将司1山本 真行1 (1.高知工科大学 システム工学群)

キーワード:インフラサウンド、マイクアレイ

1.はじめに
 人間の可聴周波数は20 Hzから20 kHzと言われている。20 Hz以下の超低周波音波をインフラサウンドと言い、火山の噴火や津波、隕石の大気突入などの大規模な自然現象や、ロケットの打ち上げのような人工的爆発によって発生する。低周波であることにより空気の粘性による減衰を受けにくく、長距離伝搬する特性を有するため、リモートセンシング技術として注目されている。
 高知工科大学ではこれまで、ピエゾ素子やPSD素子を用いた低コストインフラサウンドセンサの開発が行われてきた。しかし、これらのセンサはある程度の容量を持った容器に膜を張り、微小な気圧変動による膜面の膨張収縮を検出しているため、膜面の劣化によって性能が低下する問題がある。そこで我々は膜面を用いない、コンデンサマイクによるインフラサウンドの検出を提案し、実験を行なっている。

2.実験
 コンデンサマイクは単体ではインフラサウンドのような低周波の検出は難しいが、マイク複数個をアレイ配置することによって低周波感度が向上する。今回はコンデンサマイク16 個を用いたマイクアレイを用意して実験を行なった。各マイク素子は2 mm厚のスチレンボードに配置し、丸ピンソケットをマイクとのコネクタとして利用することで自由に配置を変更することが可能である。A/D変換器(サンプリング周波数: 40 Hz)としてArduino UNOを用いた。
 当研究室にある真空チャンバーとシリンジポンプを用いて低周波検出の実験を行なった。真空チャンバーは密閉するためのみに使用し、接続したシリンジポンプによる空気の出入りのみでチャンバー内部の気圧を微小変動させることで擬似的にインフラサウンドを発生させた。シリンジポンプは1分間に注入する容量を入力でき、それにより発生させる周波数を決定することができる。本実験では、0.1 Hz, 0.05 Hz, 0.01 Hzと周波数を変更して実験を行なった。
 また、製作したマイクアレイの可聴音に対する受音性能を確認する実験も行なった。静かな部屋でスピーカーからマイクまでの距離を1,2,3,5 mと決め、音波の減衰する様子を確認した。それぞれの距離で200,150,100,75,50,40,30,20,10 Hzと順に変更しながらアンチエイリアシングフィルターを用いずに実験を行なった。

3.結果と考察
 今回の実験で用いたマイクアレイの形状は、10 cm四方のスチレンボードに配置した直径約9 cmの円形と20 cm四方のスチレンボードに配置した直径約19 cmの円形、20 cm四方に配置した中心から120°間隔で3 本のマイク列がカーブしながら伸びている形状である。低周波検出の実験では、カーブしている形状のマイクアレイでのみ0.01 Hzの低周波検出に成功した。
 可聴音計測の実験では距離による音波の減衰の様子が見られたとともに、アレイ形状による減衰の違いも見られた。1~3 mまではどれも同じように減衰し、5 mでの減衰に違いが現れた。直径9 cmの円形、直径19 cmの円形、カーブ形状の順に減衰が大きくなっていた。また、大きく減衰していたのは200 Hzから20 Hzまでであることから、アレイ配置の形状による高周波をカットする効果ではないかと考えられる。特にカーブ形状での効果が大きく見られた。

4.まとめ
 数回の実験を通してコンデンサマイクをアレイ配置することによってインフラサウンドの検出が可能であり、さらにアレイ配置の形状を工夫することで性能を決められる可能性が確認された。これからの実験ではマイクアレイに対して斜め方向からの音波に対する効果の検証、ノイズ対策、回路の改良を行なっていく予定である。