JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ42] [JJ] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:矢島 道子(日本大学文理学部)、山田 俊弘(東京大学大学院教育学研究科研究員)、青木 滋之(会津大学コンピュータ理工学部)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:青木 滋之(会津大学コンピュータ理工学部)、座長:吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

11:15 〜 11:30

[MZZ42-09] 複雑系科学の発展の法則

*丸山 茂徳1 (1.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:複雑系科学、図鑑の時代、分類の時代、総合化の時代

過去500年におよぶ自然科学の研究史を総括してみると、次のような法則性があることが経験的に導かれる。(1)図鑑の時代:たとえば生物学の場合、どこにどのような生物がいるのかという記載の時代がまずある。次が、(2)分類の時代:それぞれの種の間の相互関係を理解する時代になり、そして、(3) 総合化(体系化)の時代:たとえば遺伝子モデルといった生物全体の体系をつくる時代になる。
​ 別の例として天文学を見てみよう。 (1)図鑑の時代として、天体観測が行われた。これは、コペルニクスやティコ・ブラーエによる約16世紀頃の時代にあたる。次が、(2)分類の時代で、17世紀のガリレオによる分類がそれにあたる。最後に (3)総合化の時代が訪れ、ガリレオやケプラーによる体系化が行われた。そして、現在は、このサイクルの第二期にあるといってよい。それは1995年の系外惑星の発見に続く系外惑星観察記載の時代である。すでに約6000におよぶ系外惑星が発見され記載されている。
​ 地球科学分野の場合、まずはじめの図鑑の時代は、地球の表層地質の記載から始まり。この時代が約500年も続いた。その後、1945年ごろまでに陸上地質の分類が行われ、その体系化として地向斜理論が提案されるに至った。一方海洋地質については1965年以降に記載が進み、1968年にはプレートテクトニクスが提案された。
​ 生物学は典型的な複雑系科学である。第一段階の図鑑の時代は、カール・フォン・リンネ(1707-1778)の二名法の提案のあと長く続いたが、その後、動植物の世界分布などが分類され、エルンスト・ヘッケル(1834-1919)によって生物の系統樹が提案された。チャールズ・ダーウィン(1809-1882)おまた、生命の進化論を提案し、体系化の時代となった。21世紀の現在は、同じサイクルが生物学でもまた起きている。それはゲノムレベルの研究であり、原核生物や真核生物のゲノムの記載に始まり、膨大なデータの分類とともに、生命の起源と進化のモデルを提案する時代を迎えつつある。