JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ] 口頭発表

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[O-02] [JJ] 学校教育における地球惑星科学用語

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)、小林 則彦(西武学園文理中学高等学校)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、座長:宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)

10:45 〜 11:15

[O02-04] 地球惑星・環境科学と高校理科教育

★招待講演

*木村 学1西山 忠男2佐々木 晶3堀 利栄4 (1.東京海洋大学・学術研究院、2.熊本大学・先端科学研究部理学系、3.大阪大学・理学研究科、4.愛媛大学・理工学研究科)

2005年日本学術会議は再編された。その際に、地球と太陽・惑星系研究を対象としていた幾つかの研究連絡会は、第三部地球惑星科学委員会として統合された。その発足において、単なる学会間の連絡調整機能だけではなく、それまで、地球物理学、地質学、鉱物学、地理学などに分かれていた分野の研究と教育も一層融合させることを意識して活動を進められてきた。地球惑星科学は、地震・火山・津波・風水害などの自然災害をもたらす自然現象の科学的解明を研究対象に含む。更に地球人口の急増に伴う地球環境劣化、温暖化現象など地球環境変化の理解にとって本質的な長短期的な地球システム間の相互作用、物質エネルギー循環の科学的解明を研究目的の根幹に置く科学でもある。このことは、この新しく定義された地球惑星科学は、人類がこの地球上で生き抜き、持続可能で安定的な社会を設計構築していく上で欠かせない基礎的知識体系であることを意味している。日本地球惑星科学連合は、発足以来、自らの科学分野について、「真理の探究」という知的探究目的はもちろんのこと、上に述べた「社会的責務」も強く意識して学界活動を展開してきた。その過程で、現在の初等・中等・高等教育と生涯教育を通じて国民が身につけるべき科学リテラシーの向上が喫緊であることを強調し、幾つかの提言をした。 
 日本地球惑星科学連合は、2005年、発足と同時に「すべての高校生が学ぶべき地球人の科学リテラシー-高等学校「理科」における全員必修科目の創設とその内容に関する提言-」を発表した。2007年にはそれをより具体化した「すべての高校生が学ぶべき地球人の科学リテラシー-高等学校「理科」における全員必修科目 精選「教養理科(仮称)」の提案」*を発表。中央教育審議会に提出した。2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて発信した提言「これからの地球惑星科学と社会の関わり方についてー東北地方太平洋沖地震・津波・放射性物質拡散問題からの教訓」(2014年9月)の中でもリテラシーの向上と人材育成の重要性を強調している。
 日本学術会議は、地球惑星科学分野のみならず、これまでの様々な分野での議論を包括し、現状を分析したうえで、国民の科学リテラシーを抜本強化するための「これからの高校理科教育のあり方」(2016年2月)**を提案するに至った。
 この提言は、これまでに比べてより強く後期中等教育での「理科基礎(仮称)」の必修科目設置を提唱し、国民の科学リテラシー向上を訴えている。その教育の後に当面「物理・化学・生物・地学」の積み上げを提案しているが、その壁はできるだけ低くし、近い将来は垣根を取り払う方向をめざすのが良いことも記している。
 日本学術会議地球惑星科学委員会社会貢献分科会でも、第21期、第22期と人材育成の議論を蓄積してきた。第21期には、国民のリテラシーを向上させるための地球惑星・環境科学分野の検定制度がありうるのではないかとの議論を蓄積し、コミュニティーに波紋を投げ掛けた。また第22期には、大学受験に際して、大学検定制度に似た単位取得制度の議論を蓄積し、記録として残している。
 日本地球惑星科学連合は、高校理科の全科目を必修化するよう2016年7月に提案した。また、日本学術会議地球惑星科学委員会は第23期、これまで社会貢献分科会の中で検討してきた人材育成の課題を独立させ、人材育成分科会を設置することにした。その中に、初等・中等・生涯教育を検討するワーキンググループと高等教育を検討するワーキンググループを設けて議論をすすめている。
参考文献
*日本地惑星連合科学連合:http://www.jpgu.org/education/20070928_doc.html
**日本学術会議 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t224-1.pdf