JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] [JJ] 学校教育における地球惑星科学用語

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)、小林 則彦(西武学園文理中学高等学校)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、座長:宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)

11:15 〜 11:30

[O02-05] 地学・地理領域での教科書使用用語に関する課題への対応と今後の展望

★招待講演

*根本 泰雄1*小林 則彦2山本 政一郎3藤原 靖4川手 新一5田口 康博6尾方 隆幸7宮嶋 敏8畠山 正恒9佐々木 晶10 (1.桜美林大学自然科学系、2.西武学園文理中学高等学校、3.福井県立福井商業高等学校、4.神奈川県立向の岡工業高等学校定時制総合学科、5.武蔵高等学校中学校、6.千葉県立銚子高等学校、7.琉球大学島嶼防災研究センター、8.埼玉県立熊谷高等学校、9.聖光学院中学校高等学校、10.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

キーワード:教科書、用語、地学基礎、地学、地理A、地理B

(公社)日本化学会は,教育・普及部門学校教育委員会に化学用語検討小委員会を設置し,中学・高等学校教科書にて使用されている教育用語のうちから用法に疑義を感じる用語を抽出し,『望ましい姿』の検討を行ってきている(日本化学会化学用語検討小委員会,2015a;2015b;2016:渡辺 正,2014;2015;2016).こうした動きを受け,2015年8月29-30日に開催された京都大学防災研究所シンポジウム「自然災害科学としての地学教育-防災・減災知識の普及に向けて-」(27K-06)にて,「教科書の用語使用に関する課題と今後への対応-地学領域での状況-」と題する課題提起が行われた(根本ほか,2015).(公社)日本地球惑星科学連合2016年大会では,「教科書使用用語課題解決への道」と題する報告(根本ほか,2016),「高等学校「地理」「地学」における教科書記述の比較検討」と題する報告(山本・尾方,2016)が行われた.
 これらの報告後,小・中・高等学校で使用されている地球惑星科学に関係する教科書にて使用されている教育用語を検討するため,日本学術会議地球惑星科学委員会地球惑星科学人材育成分科会に地学地理教育用語検討小委員会が設置され,2016年10月30日に第一回会合が開催された.会合での議論を受け,第一段階では高等学校での4つの科目“地学基礎”,“地学”,“地理A”,“地理B”で用いられている用語に焦点をあて,これらの科目で使用されている全教科書の索引に出ている用語の検討を行うこととなった.
 検討の結果,根本ほか(2016)が示した以下の課題((1)~(5))の他にも課題((N1)~(N3))が存在していることが判明した.

・根本ほか(2016)で指摘された課題:
(1) 【嫌疑用語(仮称)】の使用
例:<希ガス>か<貴ガス>か
(2) 【複数使用用語(仮称)】の使用
「同じ事柄に対して複数の用語が使用されている.」
例:<初期微動継続時間>,<P-S時間>,<PS時間>,<PS時>;<プレートの収束境界>,<プレートが狭まる境界>
(3) 【複数意味用語(仮称)】の使用
「複数の意味を持っている用語が一つの意味だけで使用されている.」
例:<アスペリティ>
(4) 【絶滅用語(仮称)】の使用
「近年は使われなくなっている,あるいは使わないことになっている用語が使用されている.」
あるいは
「使用が不適切である図表が使用されており,その図表中で適切な使い方をされていない用語がある.」
例:<火成岩分類の図表>
(5) 【カタカナ表記嫌疑用語(仮称)】の使用
「原語の発音と異なっているカタカナ表記の用語が使用されている.」
例:<リソスフェア>

・新たに明らかとなった課題:
(N1) 【読み方不統一用語(仮称)】の使用
例:梅雨は「つゆ」か「ばいう」か,V字谷は「ぶいじこく」か「う゛いじこく」か.
(N2) 【略語・日本語訳不統一用語(仮称)】の使用
例:GPSは「全地球測位システム」か「汎地球測位システム」か.
(N3) 【長音・接続記号不統一用語】の使用
例:「糸魚川-静岡構造線」か「糸魚川・静岡構造線」か.

 その他にも,言語活動としての課題(例:「楕円」,「楕円(だえん)」,「だ円」など常用漢字ではない漢字をどう表記するか),本文中に使用されている重要な用語が索引に掲載されていないといった教科書編集に関わる課題なども浮き彫りになった.
 本講演では,解決に向けて現在行っている作業状況を報告し,調査研究から提言作成を行うまで,および結果の提出先に関する議論を行いたい.