[O04-P01] 粘性流体中の粒子の沈降様式を観察する:簡単な材料による2相流の実験
キーワード:粒子沈降様式、ストークス沈降、レイリー・テイラー不安定、火山灰降下様式、マグマ溜り内結晶沈降
簡便な日用品を用いて,粒子沈降に関する流体実験を行った.主な狙いは,粒子サイズ分布,密度差,流体の粘性,等によって粒子の沈降の様子がストークス沈降(個別粒子の沈降)からレイリー・テイラー不安定による対流(粒子集団の沈降)への移り変わりがどのような条件で生じるかを観察することにある.このような粒子沈降のモードの違いは,マグマ溜りでの結晶沈降や,噴煙からの火山灰の沈降のモードの遷移にも関係すると考えられ従来必ずしも十分認識されていないように思われる.粘性流体としては水飴(イオン社,比重1.5)を一部水で薄めたものを用いた.粒子としてはガラスビーズ(糸遠しの孔を持つ,4mmmφ,2mmφ,1㎜φ,比重2.5,バルク比重(糸遠しに水飴が入った状態)2.3)を用いた.容器は空になったジャムのガラス容器(250-300ml)を用いた.流体の粘性が高く(約10Pas),粒子1㎜を用いた場合は前半に筋状に集団で沈降するモードがあり,後半はストークス沈降のモードが観察された.流体の粘性を少し小さくし(約1Pas)4㎜と1㎜のガラスビーズを用いた実験では,初期に筋状に集団で沈降するモードが見られるが,中盤で一気に塊状に粒子集団が落下するモードがあり,粒子が分散した後半はストークス沈降のモードが見られた.これは,初期には2相流体の密度が大きくレイリー・テイラー不安定の発達速度がストークス沈降速度よりも大きくなり,中盤では堆積時に2種の粒子が混合して粒子密度が高い部分が天井から剝れて集団で落下し,終盤で粒子が分散した状態では密度不安定が小さくなりストークス沈降が優勢になるためであると理解された.また,異なる粒径のガラスビーズを用いると大きな粒子がストークス沈降する周囲に小さな粒子が付随して集団として1つの大きな粒子の沈降速度よりも大きな速度で沈降するのが観察された.火山灰の降下については,Cazattero & Jellinek(2012EPSL)が議論しているように,3-4φよりも小さい火山灰が主要な粒子である場合にはレイリー・テイラー不安定による集団的な沈降が生じるが,より大きな火山灰粒子ではストークス沈降で沈降が支配されると考えてよいようだ.雲仙普賢岳での火砕流から二次的に生じた噴煙からの火山灰沈降でレイリー・テイラー不安定の集団的(対流的)火山灰降下が見られることがあったが,これは火砕流から生じた噴煙では粒子サイズが小さいためであると考えられる.マグマ溜り内での結晶沈降では天井や壁からの冷却で結晶が生じそれが浮遊した状態か,連結した状態化でふるまいは異なると思われるが,流体と粒子の密度差は火山灰のケースよりも小さいが,流体の粘性が5ケタ以上大きいためによりレイリー・テイラー不安定による沈降が生じる可能性が大きいと考えられる.