JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

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[O-05] 高校生によるポスター発表

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

13:45 〜 15:15

[O05-P20] 霜柱の成長について

*島田 匠1、*鈴木 美紅1 (1.埼玉県立所沢高等学校)

キーワード:霜柱 成長

所沢高校地学部ではここ数年にわたり、霜柱の成長に関する実験的研究を行ってきた。霜柱は一般的に、毛管現象によって地中から吸いあげられた水が凍結し、その時の体積膨張で成長すると言われている。その発生の仕組みを詳しく知ることを目的として自然に発生する霜柱と再現実験による観察を試行錯誤しながらおこなってきた。
 ここ数年の研究により次のことが分かった。1、霜柱は湿った多孔質の土の表面に発生する(野外でも実験器具内でも霜柱の下面には湿った土が存在している)。2、霜柱の成長には地熱が重要な働きをする(地中から熱が供給され、土が凍らないことが必要である)。3、放射冷却により地表面の固体粒子が核(以下、氷晶核と呼ぶ)となって、そこに水分が付着して固体の霜柱が成長する。4、成長後、倒れ掛かった霜柱が地面に接触することによってそこが新たな氷晶核になって霜柱が成長することもある。
 実験方法は次の通りである。プラスチック製の箱の真ん中あたりに透明な仕切りを入れ、片側に適度に湿った土(含水量約50%)、もう片側にカメラを設置する。電熱線を敷いた発砲スチロールのケースの中にプラスチック製の箱を入れ、それごと冷凍庫で冷やす。装置底面、地中3cm深、地表、空気中の温度をデータロガーで測定。1分ごとにカメラで撮影し、その画像を連続再生することで動画にする。
 先輩たちの先行研究では、防水透湿シートの上に湿った泥粒子をまいた際にも霜柱が成長することから、水面に対する飽和水蒸気圧と氷面に対する飽和水蒸気圧の違いにより、土中の水分が蒸発して核となる泥粒子や霜柱本体に昇華(凝華)して霜柱が成長すると考察した。 
 しかしながら再実験を繰り返したがその成長量は大きくはなかった。そこで青い着色剤を混ぜた水を用いて実験を行った。青い霜柱ができれば「蒸発→昇華」よりも液体の水が凍って霜柱が成長することが主な成因と考えることができる。何回か実験を繰り返したところ、見事に青く着色された霜柱が成長した。よって霜柱は主に地表面付近の液体の水が凝固することによって成長することが分かった。
 次に断面の観察を行った。地下の水面を表す白い筋を確認することが出来た。筋は上昇し、地表に到達した時に霜柱は大きく成長するのが観察された。霜柱の成長は冷凍庫内の温度が低い時に激しく、高い時には緩やかになる。その際に断面の板に結露の増減(水滴)が確認された。また、霜柱本体にも縞模様が入る。これは実験で作った霜柱でも自然に発生した霜柱でも同じである。泥を含んだ部分と含んでいない部分の色の差があるためである。実験で作った霜柱の方が縞と縞の間隔が狭い。そして、霜柱の縞(泥を含んだ黒い部分)は冷凍庫内の温度が高い時に入る。今回の実験を通して、霜柱は主に地表面付近の土中の液体の水が氷晶核に凝固、付加することよって成長することがわかった。そして気温の低い時に大きく成長し、高い時に緩やかになる。また、霜柱の縞は気温の高い時に入る。自然の霜柱でも段重ねのように水平方向に縞模様が入る霜柱ができることがあるが、同様の理由と考えられる。
 今回の実験で、霜柱の成長速度と地下水位の変化が関連していることが分かった。これは単純な毛管現象による地下水の吸い上げという理由だけでは説明できない。どのようにして地下水が吸い上げられ、上に向けて成長するのか。これを明らかにすることが今後の課題である。