JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

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[O-05] 高校生によるポスター発表

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

13:45 〜 15:15

[O05-P75] 深海で発見された酵素の有用性

*浅沼 龍平1、*関 鵬洋1、*中村 航成1、石井 紗弥花1、*加茂田 良夏1、*里見 里菜1 (1.神奈川県立横須賀高等学校)

キーワード:酵素、分解、アガロース、医療、健康食品

200m以深の海、光の届かない深海。そこに住む深海生物は、様々な工夫をして暮らしている。私たちは昨年、海洋研究開発機構(JAMSTEC)を訪問し、深海に住む生物をたくさん発見していること、また、さらなる深海探査のための技術開発が進められていること等、多くのことを学んだ。その後深海に関する研究成果を知るにつれ、その研究成果が実際にどんなことに使われているか普段の生活では分かりづらいために、一部の人のみにかかわることのように思え、身近に感じにくいと考えるようになった。そこで私たちは深海に関する様々な分野のうち深海の微生物がもつ酵素に的を絞り、深海生物の体の機能が人の役に立つのは本当かという論題を解くべく、研究を始めた。



深海から発見された新規酵素のうち、特に興味を持ったのが2種類のアガラーゼ。この酵素は寒天の主成分であるアガロースを分解するはたらきを持ち、それぞれ分解後に違った糖を生成する。生成された糖の1つはネオアガロオリゴ糖でデンプンの老化防止などの作用を活かして化粧品屋健康食品に取り入れられている。この糖を作ることができるのは深海から発見されたβ―アガラーゼという酵素だけであることから、この酵素の有用性は高いと言える。もう1つの糖はアガロオリゴ糖といい、癌の抑制など、ネオアガロオリゴ糖とは違った効果を持つ。この糖はα―アガラーゼという酵素を用いた方法、もしくは酵素を使わずに酸と熱で分解する方法の2通りで生成できる。このことを知って私たちは、酵素を使わなくてもアガロオリゴ糖が生成できるのなら、α―アガラーゼは有用とはいえないのではないかと疑問に思い、酸と熱によってアガロオリゴ糖を生成する実験を行った。実験にはアガロースを含む粉寒天、酸としてレモン汁を主として使い、加熱するものとしないものに分けて対照実験をした。結果、寒天からアガロオリゴ糖を生成することに成功したが、加熱によってエネルギーが消費されることや時間がかかること、また生成後に酸が残ってしまうことから、酵素を使ったほうが効率が良いということが分かった。



今回の研究で、ネオアガロオリゴ糖を作るには深海由来の酵素が必要なこと、そして、アガロオリゴ糖を作るときに酸と熱で分解するよりも深海由来の酵素を使ったほうが効率が良いことがわかった。以上より、アガロースの分解は酵素を使ったほうが有用性が高いという結論を得た。また、アガロースの分解によって得た糖は広く活用されており、私たちが気付いていないだけで、身近なものであることが分かった。このことから、深海由来の酵素は有用であるといえるのではないだろうか。