JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ] ポスター発表

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[O-06] [JJ] 日本のジオパーク-しくじりから見えてくるジオパークの理想像-

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

[O06-P36] ジオパークにおける教育的実践例とその特徴

*寺本 結哉1松多 信尚1 (1.岡山大学)

キーワード:ジオパーク、地域学習

近年、小学校における地域学習はその学習を通じて、地域に対する理解や愛着が育むことが求められている。この地域学習には「地域で学ぶ」と「地域を学ぶ」の2種類がある。「地域で学ぶ」は,例えば,スーパーマーケットの見学や農家の仕事など地域で一般的なことを学ぶことであり、教科書にその授業の内容が記載されているようなことであり、教科書を参考に授業を構成することができる。一方,「地域を学ぶ」は,例えば,その地域の成り立ちや特産品,産業などといったその地域ならではの地域の個性や特徴を学ぶことである。したがって,それぞれの学校で授業の内容が異なるため、授業内容は学校現場の裁量にゆだねられ、地域の特徴を抽出し、それを組み合わせることで授業を構成することが求められ課題となっている。
ジオパークに認定されている地域では,地学や歴史,文化といった様々な専門家がその地域の個性を抽出し,そこにある環境や景観を地域資源として抽出している。ジオパークでの教育はその地域資源を教育資源として利用することが取り込まれている。そのため,ジオパークの教育活動は地域学習に必要な教育資源をどう抽出するかについての示唆を与えてくれるはずである。
そこで本研究では、各ジオパークの事務局に教育に関する資料を送付いただき、それら資料及びHPなど公表されている情報をもとに,ジオパークでの教育活動について,「防災」,「成り立ち」,「歴史・文化・伝統」,「産業・暮らし」,「自然」の項目に分類した「地域を学ぶ内容」と,「防災」,「理科」,「社会科」,「発表」,「交流」の項目に分類した「地域で学ぶ内容」とで整理し、その手法と特徴について分析した。その結果、ジオパークの教育活動をお手本とした地域学習について提言する。
分析例を示すと,おおいた姫島ジオパークではジオクルーズというフェリーに乗って姫島を一周する活動を行っている。この活動では姫島の地形や地質をガイドさんから習いながら普段とは違った姫島の地形を見ることで姫島を再認識することで地域に対する理解や愛着を深めている。これは、「理科」に分類した「地域で学ぶ」と「成り立ち 」に分類した「地域を学ぶ」の両方に分類される。
糸魚川ジオパークはもっとも先駆的なジオパークで多くの取り組みがされている。その中の一つに地層の観察学習という理科の授業がある。ここでは「理科」である地層という一般的な原理について理解することに加えて,東西日本の境界に位置する糸魚川地域の成り立ちについても学習し、その地域がもつ特徴を実感するという「地域を学ぶ」ことがなされており,地域に対する理解や愛着につながっている。
 また,糸魚川ジオパークでは地域の魅力を発表しあうことで,言葉にしてまとめることで自分たちの住む地域を再認識し理解や愛着を定着させながら,他者との比較により自分たちの住む地域を客観的に理解することにつながっている。また,これは単独自治体であるジオパークで特によく見られる現象で,市町村合併など大きくなった自治体内での多様性を理解し合う効果も生んでいると考えられる。研究で明らかになったことは,ジオパークでの教育活動の中には「地域で学ぶ」と「地域を学ぶ」の両方の目的が含まれているものが多く、それらが分離された構図ではないことがわかった。また、「地域で学ぶ」にも種類があり「地域を学ぶ」にも種類があり、それらが相関しあって地域学習が成立している。すなわち,地域学習とは,理科や社会科などの一般の授業の中に地域的な素材を埋め込むことが必要である。そして多くのジオパークでは、それらを発表や交流に発展させ,地域を客観的に再認識し地域の多様性を理解しすることにつなげるとともに。発表の仕方やコミュニケーションなどの一般的な資質も育まれる。ジオパーク以外の地域における小中学校を通した地域学習も、これらのことを見据えて授業作りを行う必要がある。これらの地域学習の効果については今後検証していく必要がある。