JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG23] [EE] 宇宙・惑星探査の将来計画と関連する機器開発の展望

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:笠原 慧(東京大学)、亀田 真吾(立教大学理学部)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、笠原 禎也(金沢大学総合メディア基盤センター)、座長:笠原 慧(東京大学)

14:15 〜 14:30

[PCG23-03] 月・惑星探査用飛行時間型質量分析装置の開発

*今井 優介1斎藤 義文2横田 勝一郎2笠原 慧1齋藤 直昭3長 勇一郎4三浦 弥生5亀田 真吾6杉田 精司1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、3.産業技術総合研究所、4.NASA Marshall Space Flight Center、5.東京大学地震研究所、6.立教大学理学部)

キーワード:TOF-MS, K-Ar dating, Planetary Exploration

月・惑星探査におけるその場の質量分析は、月・惑星の進化を理解する上で非常に重要であると考えられる。近年の太陽系探査において、NASAの火星探査機「Curiosity」やESAの彗星探査機「Rosetta」にはその場での元素分析を行うための質量分析器が搭載されている。しかし、ISASでは月・惑星の岩石試料の計測を目的とした質量分析器は未開発である。そこで我々は月・惑星の探査を想定したTOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質量分析器)の開発を進めている。また、本TOF-MSはその場K-Ar年代測定への応用も想定している。その場K-Ar年代測定により、クレーター年代学で生じる不確定性を減らし、火星の気候変動や月の進化の過程に制限を設けることができる可能性がある。
我々がTOF-MSの使用を検討しているその場K-Ar年代測定は、K濃度測定を行うLIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起絶縁破壊分光装置)とAr同位体測定行うTOF-MSから構成されている。着陸機搭載を想定すると、重量、サイズ(直径10[cm]、全長20[cm]程度)、電圧(数[kV])などに制約があり、その条件下でAr同位体測定が可能な質量分解能のTOF-MSを設計する必要がある。TOF-MSにおいて、イオンの初期位置や初期エネルギーのばらつきを抑え、高い質量分解能を得るために、我々はイオンを反射させるリフレクター方式のTOF-MSを採用し、先行研究で試作した試験モデルの改良を進めている。先行研究で試作した試験モデルでは、イオン源で生成したイオンの加速を行うイオン加速部は1段、リフレクトロンのイオン反射部は2段の構成であったが、最適な設計を目指した性能比較試験を行うため、本研究のモデルでは、加速部を2段、反射部を1段の構成に変更した。イオンの初期位置や初期エネルギーのばらつきに依らず飛行時間が収束することを条件にして求めた解析解から、装置の寸法や印加電圧等のパラメータを設定した。これらのパラメータを基に粒子シミュレーションソフトSIMIONを用いてArイオンの飛行時間と検出器への到達率を求め、前述のサイズ、印加電圧の条件において、Ar同位体計測に必要な質量分解能が達成可能である事を確認した。
本発表では、Ar同位体計測用のTOF-MSの開発状況を報告する。また、限られた容積で質量分解能を向上させることを目指した、反射を複数回行うマルチリフレクター型のTOF-MSの研究状況を報告する。