JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG23] [EE] 宇宙・惑星探査の将来計画と関連する機器開発の展望

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:笠原 慧(東京大学)、亀田 真吾(立教大学理学部)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、笠原 禎也(金沢大学総合メディア基盤センター)

[PCG23-P02] 月回転変動の観測を目的とした小型望遠鏡の開発と実験結果のまとめ,
および将来展望

*花田 英夫1,2鶴田 誠逸1浅利 一善1荒木 博志1,2野田 寛大1,2鹿島 伸悟1,4船崎 健一3佐藤 淳3谷口 英夫3加藤 大雅3菊池 護3佐々木 宏和3長谷川 知恭3矢野 太平4郷田 直輝4小林 行泰4山田 良透5岩田 隆浩6 (1.国立天文台RISE月惑星探査検討室、2.総研大天文科学専攻、3.岩手大学工学研究科、4.国立天文台JASMINE検討室、5.京都大学理学系研究科、6.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

キーワード:月回転、小型望遠鏡、写真天頂筒、星像中心位置

月の形成過程と内部構造を理解するためには、コアの大きさ、密度、化学組成、熱の流れは本質的なパラメータである。月面上に小型望遠鏡を設置して、1ミリ秒角の精度の位置天文観測を1年以上行うと、コアの密度等を制約できる月回転パラメータを、数10ミリ秒角から1ミリ秒角以下の精度で決定できるというシミュレーション結果を受けて、将来の月面着陸ミッションを念頭に、PZT(写真天頂筒)型小型望遠鏡を開発してきた。2014年から実験観測用地上モデルを用いて、実験室、野外で測定実験を行ったので、その結果をまとめて報告する。

2014年8月に実験室で人工光源を用いて測定実験を行い、星像中心位置の変動をビデオカメラで撮影した。室内実験で得られた星像の連続記録には、地盤振動や水銀面振動の影響と思われる0.5Hz以下と約5.5Hzの変動が見られたが、同じ視野内の4星にも同様な変動が見られたので、4星の平均変動をそれぞれの記録から差し引いた結果、それらの変動をほとんど消すことができた。残りの細かい変動が星像中心位置決定誤差によるものと思われる。

同年9月に行った野外観測では実際の星を受光し、天体観測専用のCCDカメラを用いて約2秒間隔で星像を撮影した。CCDカメラの視野の中に7~8等級の星が最大6個観測された。室内実験の結果と同様に、同一視野内の星像中心位置の変動には共通の成分が見られるが、記録間隔が長いこともあり、室内実験ほど顕著ではない。同一視野内の星の平均変動をそれぞれの星の変動から差し引いた結果、ばらつきは少し小さくなったが、室内実験の結果ほど小さくはならなかった。

星像の光度分布を調べたところ,星像の最大光度と,星像以外の部分の光度のばらつき(背景ノイズ)の比(ここでは星像のSN比と呼ぶ)が,室内実験の場合が野外観測に比べて約1桁大きかった.そこで,星像中心位置の変動のばらつきと星像のSN比との関係を調べたところ、図に示すように、両者の間に負の相関が見られた。焦点距離50cmの地上モデルでは,焦点面上での5μmの変位が約1秒角に相当するので、1ミリ秒角の精度を達成するためには、CCD上で5nm以下の精度で星像中心位置を決定する必要があり、図3から、星像のSN比は約1000以上が必要であると推定できる.

以上を要約すると、
1) 実験結果は、SNRが十分に大きければ(1000以上)、1ミリ秒角の精度の観測が可能であることを示す。
2) 野外観測において数秒角の観測精度は達成できた。
3) 観測精度は、おもに星像のSN比の違いによることがわかった。
4) 星像中心位置の変動は、おもに水銀面の振動からきて、それらの影響は同一視野内の星ではほぼ共通である。

また、本文の内容には含まれませんが、将来に向けて、
5) 月惑星探査機への搭載の機会を増やすためには望遠鏡の小型化は重要である。
6) 上記のために、鏡筒を鉛直に保持する新方式の開発を始めた。