[PCG24-P09] 超小型衛星による火星着陸機搭載THzヘテロダイン分光装置の開発検討
キーワード:火星、超小型着陸機、THzリモートセンシング、惑星大気、ヘテロダイン分光
近年、ハーシェル衛星(ESA)のサブミリ波帯観測により、酸素分子が低高度において増加する傾向が捉えられた。火星では、局所的なメタンの発生も観測されているが、これらはいずれも、まだその起源がよく分かっておらず、生物起源の可能性も含め、火星大気における基本的な化学反応ネットワークの理解が重要な課題となっている。 我々は、東京大学工学系研究科の中須賀研究チームが検討を進めている超小型火星周回機や着陸機により、火星大気中のO2、H2O、O3、COや同位体分子などの昼夜・四季を通じたリモートセンシングを実現すべく、0.4, 0.7 THzヘテロダイン分光装置の開発検討を進めている。検出部には衛星搭載用に開発されたショットキーバリアダイオードミクサと局部発振信号に逓倍型の固体発振器を内蔵したヘテロダイン受信機を、分光計にはチャープ型分光計を採用する計画である。超小型のため、現在の検討段階では搭載できるバジェットは6kg程度以下の制限があるため、システムの熱設計が1つ重要な課題となる。着陸候補の1つである火星の低緯度地域の平原の温度は、1公転周期の季節変動と日照変化によって外気は、190 Kから280 K程度まで変動する(Mars Climate Databaseより)。火星の大気圧程度の熱流体も考慮した熱解析シミュレーションを実施したところ、熱伝導と輻射を効果的に利用すれば、少なくとも夜間にはシステムの昇温を抑えて(80度程度以内)、オペレーションが可能であることを確認できた。日中での観測も実現させるべく、高温時は熱伝導をより効果的に使えるようにするなどのさらなる検討を進めている。本講演では、火星の地上からの観測を想定した放射輸送モデルの計算結果や、これらのTHzヘテロダイン分光装置の開発検討状況について報告する。