JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] [EE] Exploring space plasma processes with Magnetospheric Multiscale (MMS) mission

2017年5月20日(土) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:長谷川 洋(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、Thomas Earle Moore(NASA Goddard Space Flight Ctr)、Benoit Lavraud(IRAP)、銭谷 誠司(自然科学研究機構国立天文台)

[PEM13-P03] Investigation of the magnetic neutral line region with the frame of two-fluid equations: A possibility of anomalous resistivity inferred from MMS observations

*小林 勇貴1町田 忍1北村 成寿2斎藤 義文2家田 章正1 (1.名古屋大学大学院工学研究科、2.宇宙航空開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:MMS mission , two fluid equation, magnetic reconnection, plasma waves, anomalous resistivity

磁気リコネクションは、磁場のエネルギーがプラズマのエネルギーに変換される基礎的な物理過程である。近年、その中心部分に存在する磁気中性線近傍において磁場を融合させる物理メカニズムの解明を目指して、4機の衛星で構成されるMMS計画が展開されている。本研究においては、磁気中性線近傍における磁場凍結則の検証と、二流体方程式を用いた電子とイオンの動力学に関する因果関係について調べた。
 運動論的な取り扱いを行うと、磁気中性線の周囲には、厚みが電子の慣性長程度の電子の散逸領域と、さらにそれを取り囲むように、イオンの慣性長程度の厚みのイオン散逸領域が存在していると考えられている。理論的には、イオンの慣性領域においてイオンの磁場凍結則が破れる一方で、電子は磁場に凍結されていることが、粒子シミュレーション等の手法によって示されている。しかし、今回、MMSが磁気中性線近傍を通過したとされる2015年10月16日1307UT付近のデータ[Burch et al., Science 2016]について調べた所、イオン散逸領域において、イオンだけでなく電子についても磁場の凍結則が成り立っていないことが確認された。また、電場、磁場の波動成分についても調べたところ、当該の領域で強い波動電場の存在が確認された。波動のスペクトル解析から、低域混成波および電子のサイクロトロン周波数を特性周波数とするものであることが判明した。
 二流体方程式の枠組みでは、イオン、電子ともに、衝突項以外の項についてMMS衛星の観測から値を求めることができる。その性質を用いると、両者の衝突項をそれぞれ求めることができ、磁気圏のプラズマは基本的に無衝突プラズマであるので、その衝突項は励起された波動による異常抵抗に起因するものであると考えられる。一方、通常の二流体方程式系においては、イオンと電子の衝突項に対応する2つのベクトルは、両者の間で及ぼしあう力が内力であるために、大きさが同じで、丁度反対方向を向いているとされるが、実際のデータを用いて求めた衝突項に対応するベクトは、そのような条件を満たしていなかった。その理由としては、波動によって持ち去られる運動量が無視出来ない可能性が挙げられる。また、別の可能性として、各物理量の計測上の誤差に起因することも考えられ、それらについて検討を行い、イオン散逸領域において異常抵抗の効果が二流体運動方程式において無視出来ない程度作用していることを示唆する結論が得られた。