JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] [EE] Dynamics in magnetosphere and ionosphere

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 105 (国際会議場 1F)

コンビーナ:堀 智昭(東京大学大学院理学系研究科)、田中 良昌(国立極地研究所)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波計測研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、座長:新堀 淳樹(ISEE, Nagoya Univ.)、座長:中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)、座長:大山 伸一郎(ISEE, Nagoya Univ.)

11:15 〜 11:30

[PEM14-20] 地球磁気圏昼側リコネクションライン位置の季節及び太陽風依存性

*星 康人1,2長谷川 洋2北村 成寿2斎藤 義文2 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:magnetopause, magnetic reconnection

オーロラ活動や磁気嵐など地球周辺の宇宙環境における擾乱現象は、太陽風起源のエネルギーによって駆動される。このエネルギー流入において最も重要な過程は、太陽風中の惑星間空間磁場 (IMF) と地球磁場がつなぎ変わる磁気リコネクションである。IMFが南向き、あるいは朝夕成分が支配的であるとき、磁気リコネクションが起こる領域は昼側磁気圏境界面の磁気赤道付近にライン状に広がることが知られている。この領域は、Xラインと呼ばれる。Xラインの位置が変化すると、Xラインにおける境界条件の変化によって磁気リコネクションの効率が変化すると考えられる。この結果、地球磁気圏内へ流入する磁束量が変化する可能性がある。すなわちXラインの位置は、磁気圏内へのエネルギー輸送において重要なパラメータとして考えられる。Xラインの位置は、近年のモデリングや観測等によって、太陽に対する磁極軸の傾きであるダイポールチルトや太陽風の効果で磁気赤道付近から南北にずれることが指摘されている。しかしながら、統計的な観測に基づいたXラインの位置は未だに明らかになっていない。そこで、磁気リコネクションによって加速されたプラズマ流であるジェットの統計解析を行い、IMFが南向きの時のXラインの位置に対するダイポールチルト及び太陽風の影響を調べた。解析には、昼側低緯度で観測を行うTHEMIS衛星の約10年分のプラズマ及び磁場観測データのうち、磁気地方時が10時から14時の昼側で観測されたデータを用いた。

まずジェットの候補として、磁気圏境界面付近で境界面内の速度がシースのアルフベン速度程度の150 km/sを超える速度を持つイオン流を選んだ。次に、シースの流速を引いた観測値とジェットの速度の理論値を比較するWalénテストを行い、計715例のジェットを同定した。Xラインの位置は、ジェットの向きと位置の関係から推定した。Xラインの北側では北向きのジェット、Xラインの南側では南向きのジェットが観測されることを前提に考える。その上で、推定したXラインの北側に南向きジェット、あるいは推定したXラインの南側に北向きジェットの観測点が存在する確率が最小となる線形の判別関数を決定することで、平均的なXラインの位置を推定した。この結果、Xラインの平均的な位置はダイポールチルトが存在すると冬半球側へ最大で地球半径の約6倍の距離ずれることが判明した。さらに、IMFの太陽-地球向き成分であるBX成分の効果によって、地球半径の約2.5倍の距離ずれうることが判明した。以上の結果から、Xラインの位置に対するダイポールチルトの効果は、IMF BX成分の効果に比べ大きいことが明らかになった。このことから、南向きIMF時の昼側磁気リコネクションによる磁気圏内へのエネルギー輸送効率は、ダイポールチルトが大きいときに低下することが示唆される。これは、ダイポールチルトの効果が大きい時に地磁気活動度が下がるという過去の観測結果の原因が、Xラインの位置がダイポールチルトに依存していることにあることを示唆する。