JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] [EE] Dynamics in magnetosphere and ionosphere

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:堀 智昭(東京大学大学院理学系研究科)、田中 良昌(国立極地研究所)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波計測研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)

[PEM14-P35] Observation of auroral polarization using a polarization imaging spectrometer in Alaska

大野 玲央1、*坂野井 健1鍵谷 将人1 (1.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)

キーワード:aurora, polarization, spectroscopy

近年の直線偏光子とフォトーメータを組み合わせた極冠域降下電子による酸素原子630nmのオーロラ発光の観測結果から磁力線平行方向に1.9±0.1 %程度の直線偏光が観測された。また、理論的には降下電子エネルギーや位相関数などに対応し、630nm発光が0.6-1.8%程度偏光すると示唆されている[Lilensten et al., 2015]。
 本研究では、広視野偏光分光器を用いて、磁気子午線に沿った偏光の仰角分布を長期間にわたって捉えることを目的とし、酸素原子630nmのオーロラの直線偏光の観測を行った。この広視野偏光分光器は、魚眼レンズ、回転するステージに装着したワイヤーグリッド型直線偏光子、VPH透過型回折格子ならびにEMCCD検出器から成り、450nmから710nmの波長範囲で波長分解能2.0nm、視野角130度を有する。偏光子を45度ずつ回転させたときにEMCCDカメラで検出される強度変化から入射光の偏光状態を測定することができる。
 偏光計測データには、オーロラ発光の偏光に加え、大気散乱による偏光や、光学系を格納する観測箱のアクリルドーム、魚眼レンズ、回折格子などの機器由来の偏光(以下機器偏光と呼ぶ)の影響をうける。したがって、これらのオーロラ偏光以外の効果を定量的に校正することが本研究の鍵となる。本グループは、2013年よりオーロラ偏光観測を行ってきているが、機器偏光を校正するための装置の不具合や解析方法の未確立により、十分な精度でオーロラ偏光度を見積もることが出来なかった。本研究では、機器偏光の厳密な校正のために、既知の偏光状態を持つ光を入射し、偏光子を回転させながら強度変化を測定する装置を新たに製作した。特に、モーターの回転角の確認を行いながら制御できるよう改良を施した。さらに、この校正光源をもちいて130度の全ての視野方向から入射する光線に対して、機器偏光を厳密に校正する解析方法を開発した。
 この広視野偏光分光器と校正光源を2015年11月にアラスカ州ポーカーフラット観測所に設置し、滞在中にこの校正光源装置を用いた厳密な機器偏光の校正データ取得を繰り返し行った。この後、自動運転にて翌2016年3月までオーロラ偏光の連続観測を達成した。
 校正データの解析の結果、機器偏光パラメータ(ストークスベクトル)の視野全体の特性を明かにし、偏光度の計測誤差として0.2%程度の十分な精度での校正を達成した。この校正データを用いて、2015年11月19日に観測されたオーロラの偏光解析を行った結果、630nmオーロラの直線偏光度は1.6±0.9%であることが分かった。また、偏光度は磁気子午線に沿って磁北側の低い仰角方向で大きく、仰角が上がるにつれて減少すること、また磁気天頂付近から磁南側のの低い仰角方向いいくに従って再び偏光度が上昇することが明らかになった。また、オーロラ活動度が上昇し発光領域が広がる際に、偏光度が大きくなるといった傾向もみられた。