JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM21] [JJ] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2017年5月25日(木) 09:00 〜 10:30 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、中村 匡(福井県立大学)、座長:中村 匡(福井県立大学)、座長:三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)

10:15 〜 10:30

[PEM21-10] デカメータ電波パルスの観測に基づき我が銀河系中心に発見された巨大ブラックホール・バイナリーの存在の確証

*大家 寛1 (1.東北大学理学研究科地球物理学専攻)

キーワード:ブラックホールバイナリ―、銀河中心、デカメータ波電波

序 本研究では主として、東北大学デカメータ電波長距離干渉計システムを用い、我銀河系中心部のデカメータ電波パルス観測を実施してきていて、1984年、電波源が巨大ブラックホールにあることを認めた。その後1999年の時点では、その周期が最長130secから最短0.3secに至る23系列、したがってほぼ周期に比例する質量比をもつ巨大ブラックホールから中間質量ブラックホールにいたる、23個以上のブラックホール群を提唱することもあった。2010年以降再観測を実施し、特に、2014年からデジタル方式干渉計へと改良し2016年には本格的追試観測に入り、周期20sec以上のパルス電波源と対応する巨大ブラックホール群について精査した。その結果従来の提言を大幅に修正することとなった

2.観測  今回、東北大学長距離基線デカメータ電波干渉計観測は、2016年2月2日より28日にわたる、銀河中心部の出現前と2016年3月15日から6月30日にわたる銀河中心部の直接観測期間に実施した。干渉計の観測点はYoneyama, Zao、およびKawatabiの3局よりなり、最長83km,最短44kmの3基線が設定されるが、21.860MHzにて全帯域幅1kHで観測された受信信号は仙台局にテレメータ伝送される。各信号は900Hz, 1000Hz および1100Hzにおいて帯域幅100Hzの狭帯域信号に分割され、各々サンプリングレート3 kHzでAD変換された後干渉データとして処理される。

3. パルス周期探索のためのFFT 解析  干渉計処理後のデータは到来方位決定のため方位検出用テンプレート・フリンジと相関を取ったのち周期10secから8200secにわたりFFT解析を実施し、背景雑音の0.1%から1%のパルス成分を抽出している。解析結果から対象とするパルス群は銀河系中心部の出現と明確に対応し+-0.5度の精度で我が銀河系中心に源を持つことが確証された。パルス群を示すスペクトルは基底スペクトルの中心がGaaに対する156.6secとGabに対する130.8secにあり、それぞれ第3高調波まで展開していてそれぞれに2200sec の周期変調(周波数変調)があり、中心スペクトルの上下にそれぞれ(1/2200) Hz の周波数変調を反映する3~5個の側帯波スペクトルの存在を示して、Gaa とGabは互いに2200secで公転するバイナリーを構成していると結論された。

4. シミュレーション結果との対比 ここで、本研究では、円軌道視線速度を光速度の16%と仮定しGaaおよびGabは同レベルの強度で、それぞれの基底スピン周期から、第2、第3高調波までのパルス電波を放射するとした正弦波群からなる関数に対しFFT解析を試みたが、シミュレーション結果と観測データのFFT解析結果は良く一致した。この結果は従来5組のそれぞれ異なる周期変動を持つバイナリー系としてきた仮定が大幅に修正され、巨大ブラックホール・バイナリ―のうち最大級の1対のみ存在し、その他には中間質量ブラックホールが存在するという結果となった。

5.同期相関解析(Box Car法解析)によるパルス波形および軌道運動の確認  FFT解析で得られたスペクトルによって示される周期を起点にその変化率4x10^ -5のステップで周期探索をしつつ干渉計出力の時系列データに対し周期同期相関法でパルス波形の検出を行った。本研究ではGaaおよびGabの公転運動に伴って起こるドップラー効果に基づく周期変動に同期した周期変動型のBox Car法を新たに開発して実施している。従って完全な同期相関を実現するにはGaa 及びGabの固有スピン周期の探索と並行して公転周期、軌道運動速度、公転軌道上の位置情報(周期変動関数の位相)を探索する必要がある。解析の結果、公転周期のより詳細な周期は2205secで公転軌道は円軌道に近く観測されるGaaおよびGabに対し観測される電波源位置は赤道域を中心とする低緯度とされるが、直接可視領域と共役的にブラックホールの裏側が同時観測されることが判明した、この裏側に出現する共役点は自転するKerブラックホールの周辺を取り巻くErgo-sphere の回転空間においてRay Path がスパイラル状に曲げられることによって生ずる現象として理解される。

6.結論 本研究の結果、従来報告してきた5組以上のブラックホール・バイナリ―群の存在は否定され、これまでGaaとGabと命名してきた1対のブラックホール・バイナリーの存在に収斂することが判明した。得られたパラメータにKepler—Braheの法則を適用するとGaa,およびGabの公転速度が0.16cおよび0.19cの場合質量はそれぞれ168万および140万太陽質量となる。