JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM22] [JJ] 大気圏・電離圏

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:大矢 浩代(千葉大学大学院工学研究科)、座長:西岡 未知((独)情報通信研究機構)

11:45 〜 12:00

[PEM22-05] Bimodal electron energy distribution observed by sounding rocket in the Sq current focus

*阿部 琢美1 (1.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)

キーワード:Sq電流系、電子エネルギー分布、観測ロケット、電子加熱

昼側電離圏のSq電流系中心に発生する電子加熱およびプラズマ特異現象の発生メカニズム解明を主目的とする観測ロケット実験が2016年1月15 日に行なわれた。この観測ロケット(S-310-44号機) には電子エネルギー分布・電子密度擾乱測定器(FLP)、電場計測器(EFD)、プラズマ波動測定器(PWM)、磁場計測器(MGF)等計5個の測定器が搭載され、現象解明のカギとなるパラメータの観測が行われた。1年前の速報ではFLPの観測結果として高度100~110 kmの電子温度が背景に比して約200 K上昇していたことを報告した。本発表では、その後に行った電子エネルギー分布に関する解析結果について報告を行なう。
FLPでは、直径3mmの円筒プローブに印加する周期10Hz・振幅3Vの三角波電圧に周波数2kHzの微小振幅の正弦波を重畳し、その2倍の高調波成分を取り出すことで、所謂プローブのV-I特性の2次微分成分の推定が可能である。電子エネルギー分布関数は2次微分成分を用いた式で表されるため、ロケットから見た空間電位が決定されれば、電子エネルギー分布関数を導き出すことが出来る。2次微分電流成分の印加電圧に対する変化において、空間電位は電流値の鋭い極小(dip)として現れるため、一般には容易に判断できる。
実際に観測されたデータにおいては、高度100 km付近までは比較的単調なエネルギー分布が観測され、ラングミュアカーブにおいて電子減速領域と定義される電圧範囲の2次高調波電流の変化から電子温度と電子密度が推定された。しかし、高度100~110 kmでは空間電位を表すdipが次第に不明瞭になり、中には空間電位の判断に躊躇するデータもあった。更に高い高度110 km以上の観測データでは、空間電位と見なされるdipの高エネルギー側にbimodal(2つ山)の分布が現れるようになった。2つの分布が観測される可能性としては、1)2つの異なる温度をもつエネルギー分布、2)非等方的なエネルギー分布、3)stationalな熱的電子に加えバルクエネルギーをもつ電子集団の存在、の3つが考えられる。また、bimodalな分布の特徴として、ロケットのスピン位相に伴ってピーク電流の値が周期的に変化することがあげられ、これは分布の起源に関連したものであると考えられる。発表ではこれらのエネルギー分布の特徴に関する解析結果を紹介し、その起源および100-110 km高度で観測された高い電子温度との因果関係について議論を行う。