JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM22] [JJ] 大気圏・電離圏

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:西岡 未知((独)情報通信研究機構)、座長:大矢 浩代(千葉大学大学院工学研究科)

14:45 〜 15:00

[PEM22-11] ノルウェー・トロムソにおけるGNSS受信機を用いた電離圏シンチレーションと全電子数の観測

*坂本 明香1大塚 雄一1小川 泰信2細川 敬祐3 (1.名古屋大学、2.国立極地研究所、3.電気通信大学)

キーワード:GPSシンチレーション、ROTI、電離圏不規則構造

電離圏において電子密度不規則構造が存在すると人工衛星からの送信された電波の信号強度や搬送波の位相(キャリア位相)が変化することがある。これを電離圏シンチレーションと呼ぶ。電離圏シンチレーションには、受信信号の振幅(信号強度)が変動する振幅シンチレーションと、搬送波位相が変動する位相シンチレーションがある。振幅シンチレーションは、電子密度不規則構造により回折した異なる位相の信号と干渉し合うことによって発生する。振幅シンチレーション指数S4は、受信信号強度の標準偏差を平均信号強度で正規化したものである。一方、位相シンチレーションσφは、電波の伝搬経路上の屈折率変動による受信信号の位相変動であるため、電子密度の空間的・時間的変動によって引き起こされる。位相シンチレーション指数は、搬送波位相の標準偏差で定義される。位相シンチレーションは赤道域および極域のどちらにおいても発生するが、振幅シンチレーションは主に赤道域で大きく、極域では小さいことが知られている。

 本研究では、ノルウェー・トロムソに設置されている2周波( L1: 1575.42 MHzとL2:1227.60 MHz )のGlobal Navigation Satellite System(GNSS) 受信機を用いて、高緯度における位相シンチレーションと振幅シンチレーションの比較・解析を行った。シンチレーション指数は、GPS衛星から送信される信号強度と位相を、サンプリング周波数50Hzで観測して調べた。本研究では、位相シンチレーション指数としてσφではなく、TECの時系列の差分(ROT : Rate of TEC)の標準偏差であるROTI(Rate of TEC change Index) を用いた。従来の研究では、極域において振幅シンチレーションはほとんど発生しないとされていたが、本観測では低ノイズの受信機を使うことによって極域での弱い振幅シンチレーションも観測することができた。2013年1月から2015年12月までの3年分の観測データをもとに、S4とROTIの季節変動を調べた。S4とROTIは主に春と冬の夜間に大きな値になっており、季節・地方時依存性が見られた。このような特徴は、極域の夏季は太陽放射による電離生成により電子密度が一様になってしまうが、冬季の夜間では昼間側からの極冠域パッチなどによる電子密度不規則構造が存在するためだと考えられる。しかし、S4とROTIが増大する時間は、必ずしも一致していなかったため、両値の日変動を調べた。このとき、S4とROTIの増大が同時に発生した場合、S4のみが増大した場合、ROTIのみが増大した場合で比較した。S4とROTIが同時に増大するのは主に朝や昼間が多かった。一方のみが増大するのは夜間に多く、ROTIの増大に比べ、S4の増大は長時間継続する傾向がみられた。また、夏の昼間には、ROTIのみ増大する場合も見られた。本研究では、これらの違いから、極域におけるシンチレーションを起こす電離圏擾乱の生成機構について考察する。