JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] [EJ] アルマによる惑星科学の新展開

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:百瀬 宗武(茨城大学理学部)、小林 浩(名古屋大学理学研究科)、下条 圭美(国立天文台チリ観測所)、野村 英子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:百瀬 宗武(茨城大学理学部)

10:00 〜 10:15

[PPS04-05] ALMAによる太陽系天体の観測提案

*浦川 聖太郎1関口 朋彦2 (1.特定非営利活動法人日本スペースガード協会、2.北海道教育大学)

キーワード:小惑星、衛星、アルマ

惑星形成期に存在した微惑星は、惑星形成のみならず、後期重爆撃や海の起源となる物質をもたらした可能性のある天体として、太陽系の進化過程において重要な役割を果たしてきた。現在まで残った微惑星が、小惑星や彗星である。小惑星の形状を明らかにすることは、太陽系形成期から現在に至るまで微惑星が経験した、衝突・破壊・合体の履歴を解明する手がかりとなる。また、外惑星の衛星を調査することも、太陽系の成り立ちを解明する上で重要である。木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスでは、内部物質の噴出(プリューム)が検出されている(Roth et al. 2014; Porco et al. 2006)。プリュームの活動を長期的に監視し、その組成・温度・分布・噴出量が分かれば、衛星の活動状況や、氷や有機物といった生命関連物質が太陽系内にどのように存在しているのか分かるであろう。

 ALMAの高い空間分解能は、小惑星や外惑星衛星といった太陽系小天体の謎に迫ることができる。これまで、小惑星の形状を直接観測する方法として、探査機による探査と補償光学を用いた大型望遠鏡による観測が用いられてきた。しかし、探査機を送るには、多額の予算が必要であり、その機会は限られる。Keck望遠鏡では補償光学を用いた観測により、数十の小惑星の形状を解明したが、形状がわかる小惑星は、直径100kmを超えるものに限られている(Marchis et al. 2006)。TMT(Thirty Meter Telescope)に補償光学を組み合わせることで、形状が明らかになる小惑星の数は増加する見込みである。しかし、TMTがファーストライトを迎えるのは2020年以降である。そこで、現在において、有効な観測手段となるのが、ALMAである。図はALMA、Keck+AO、TMT+AOの空間分解能を示す。ALMAの空間分解能はKeck+AOを超え、メインベルト帯にある直径50km程度の小惑星の形状を解明することができる。形状解明が可能となる小惑星の数は163天体にのぼる。一方、小惑星の形状を解明する間接的な手法としてlightcurve inversion法がある。この手法は、小惑星の時系列光度変化(いわゆるライトカーブ)から、小惑星形状を導出する方法である。この手法は、十分な測光精度が達成できれば、小惑星の大きさによらず形状の推定が可能である。近年、直接撮像とライトカーブや小惑星の掩蔽観測を組み合わせることで、より高精度に小惑星の形状を導出するADAMアルゴリズムが提案されている (Viikinkoski et al. 2015a)。例えば、ALMAで撮像した小惑星(3)Junoの形状はライトカーブ観測を組み合わせることで、さらに精度良く形状を求めることができるようになった(Viikinkoski et al. 2015b)。このような観測を、多くの小惑星に実施することで、小惑星の形状について統計的に議論できるようになるであろう。

 ALMAの高い空間分解能は、外惑星衛星表面の場所ごとの温度分布を調べることを可能にする。ALMAにより、エウロパやエンケラドスのどの領域で、どの程度の量のプリュームが噴出しているのか長期的にモニタリングすることも可能である。加えて、エンケラドスとエウロパ以外の衛星にプリュームを検出できる可能性もある。
本講演では、ALMAを用いた太陽系天体の観測対象案として小惑星と外惑星衛星の例をあげる。この2例をベースとして、太陽系の形成過程や進化を解明するための観測について多くの方々と議論を行いたいと考えている。