11:05 〜 11:20
[PPS06-07] あかつき金星紫外画像に見られる地形固定構造
キーワード:金星、あかつき、UVI、重力波
金星探査機あかつき搭載の紫外カメラUVIで取得された雲画像を用いて、金星地表に対してほぼ固定した微細な模様を検出し、その起源について考察する。同じくあかつきに搭載されている赤外カメラLIRにより、南北にまたがる巨大な弓状構造が発見され、これまでに複数回出現していることが確認されている。これらは特定の高地上に出現し、背景風に流されることなくその場にあり続けることから、その成因は地形性の重力波によるものと考えられている。本研究は異なる波長でも似た特徴を持つ構造があることを示すものである。
これまでに1985年のVEGA気球による大気観測ではAphrodite大陸(標高3000~4000m)上空において鉛直振動が観測され、最近はVenus Express搭載のVMC画像を用いた雲追跡によりAphrodite大陸上空で東西風速が減速していることがわかった。この2つの研究結果は、重力波の存在とその影響を示唆している。重力波は浮力を復元力とする波動であり、下層大気中で励起され鉛直に伝播する。そうして下層から輸送してきた運動量やエネルギーを重力波が砕波する際に背景場に受け渡し、背景風を減速させることとなる。この効果は大気のスーパーローテーションを理解するための重要な要素となるため、金星大気重力波の更なる解明が必要とされている。そこであかつきのUVI画像を用いて地形固定構造を確認し、発生地域とローカルタイムの傾向、および水平波長を解析する。またUVIの283 nmと365 nmで撮影された画像を比較し、見え方の違いを確認する。
データには画像を緯度・経度に展開したL3データを用いる。地形に固定された構造を確認するため、数時間以内に連続的に撮影された画像を重ね合せて平均をとる。こうすることで移動性の構造がならされ、停滞する構造が強調される。さらにガウシアンフィルタをかけた画像を元の画像から引くことでハイパス処理をし、小さな構造を確認しやすくする。
最初に金星再投入日である2015年12月7日に撮影された283 nm画像を解析した。この波長では二酸化硫黄による太陽光吸収が卓越する。この日のデータでは赤道帯において、いくつか南北に渡る引っかきキズの様な構造が確認できた。これらは背景風に流されずにその場で留まる、地形に固定された波であることを確認した。さらに現在までに入手可能な283 nmのL3データをすべて解析したところ、発見できた地形固定構造はすべて赤道帯の高地上に出現している。また、発生するローカルタイムに偏りがあり、専ら昼から夕方にかけて出現していることがわかった。その東西波長は200~300kmほどである。同じ日時・場所においてLIRでも弓状構造もしくは筋上の構造が観測されており、共通の力学現象であることが示唆される。同様の解析を365 nm画像でも行ったが、停滞する構造は明瞭ではない。しかし振幅の大きな固定構造が現れる、または365nmの吸収物質の変動が少ない時であれば観測できた。この波長で太陽光を吸収する物質の正体はわかっていないが、今回明らかになった283 nmとの違いは、この物質の高度分布や化学寿命に制約を与えうるものである。
地形固定構造が確認できたので、次にその構造が重力波によって生成されたものと仮定し、その重力波について考察する。まず重力波の伝搬に伴う二酸化硫黄と雲の密度変動を計算し、ここから期待される輝度変動を観測と比べることにより重力波パラメータを導出することができる。今後は重力波が雲層へ渡す運動量を見積もり、スーパーローテーションへの影響を確認する。
これまでに1985年のVEGA気球による大気観測ではAphrodite大陸(標高3000~4000m)上空において鉛直振動が観測され、最近はVenus Express搭載のVMC画像を用いた雲追跡によりAphrodite大陸上空で東西風速が減速していることがわかった。この2つの研究結果は、重力波の存在とその影響を示唆している。重力波は浮力を復元力とする波動であり、下層大気中で励起され鉛直に伝播する。そうして下層から輸送してきた運動量やエネルギーを重力波が砕波する際に背景場に受け渡し、背景風を減速させることとなる。この効果は大気のスーパーローテーションを理解するための重要な要素となるため、金星大気重力波の更なる解明が必要とされている。そこであかつきのUVI画像を用いて地形固定構造を確認し、発生地域とローカルタイムの傾向、および水平波長を解析する。またUVIの283 nmと365 nmで撮影された画像を比較し、見え方の違いを確認する。
データには画像を緯度・経度に展開したL3データを用いる。地形に固定された構造を確認するため、数時間以内に連続的に撮影された画像を重ね合せて平均をとる。こうすることで移動性の構造がならされ、停滞する構造が強調される。さらにガウシアンフィルタをかけた画像を元の画像から引くことでハイパス処理をし、小さな構造を確認しやすくする。
最初に金星再投入日である2015年12月7日に撮影された283 nm画像を解析した。この波長では二酸化硫黄による太陽光吸収が卓越する。この日のデータでは赤道帯において、いくつか南北に渡る引っかきキズの様な構造が確認できた。これらは背景風に流されずにその場で留まる、地形に固定された波であることを確認した。さらに現在までに入手可能な283 nmのL3データをすべて解析したところ、発見できた地形固定構造はすべて赤道帯の高地上に出現している。また、発生するローカルタイムに偏りがあり、専ら昼から夕方にかけて出現していることがわかった。その東西波長は200~300kmほどである。同じ日時・場所においてLIRでも弓状構造もしくは筋上の構造が観測されており、共通の力学現象であることが示唆される。同様の解析を365 nm画像でも行ったが、停滞する構造は明瞭ではない。しかし振幅の大きな固定構造が現れる、または365nmの吸収物質の変動が少ない時であれば観測できた。この波長で太陽光を吸収する物質の正体はわかっていないが、今回明らかになった283 nmとの違いは、この物質の高度分布や化学寿命に制約を与えうるものである。
地形固定構造が確認できたので、次にその構造が重力波によって生成されたものと仮定し、その重力波について考察する。まず重力波の伝搬に伴う二酸化硫黄と雲の密度変動を計算し、ここから期待される輝度変動を観測と比べることにより重力波パラメータを導出することができる。今後は重力波が雲層へ渡す運動量を見積もり、スーパーローテーションへの影響を確認する。