JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] [EJ] あかつき金星周回1.5年とその科学成果

2017年5月20日(土) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、山本 勝(九州大学応用力学研究所)、Kevin McGouldrick(University of Colorado Boulder)、座長:堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)

14:05 〜 14:20

[PPS06-12] Venus Expressの分光撮像データを用いた金星雲頂のpolar ovalの研究

*武藤 圭史朗1今村 剛2Peralta Javier3 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学大学院 新領域創成科学研究科、3.Japan Aerospace Exploration Agency)

キーワード:金星、金星大気、大気力学

金星は主に硫酸からなる反射率の高い雲に覆われており、可視波長で金星を観測するとほぼ模様が存在しない。一方、紫外波長で観測を行うと未知の紫外吸収物質の影響により様々な模様が観測できる。金星の可視波長におけるアルベドは0.8程度であり、太陽光のエネルギーが可視領域において大きいことを考えると可視領域においての太陽光吸収は金星の熱収支にとって重要であると考えられる。
金星において可視波長でも観測されている数少ない模様の一つに、極域に存在するpolar ovalがある。Polar ovalは可視から紫外にわたる波長で観測されており、ほかの紫外波長で観測されている模様とは異なっている。金星において可視波長で顕著な吸収を見せるpolar ovalを調べることで雲層の光学特性を支配する吸収物質を分布させる物理プロセスへの手がかりとなると考えられる。しかしpolar ovalの全体形状や形状の時間変化、光学特性はほとんど調べられていない。
そこで、本研究ではVenus Expressに搭載されているVMCの画像を用いpolar ovalの全体形状の復元を試み、同じくVenus Expressに搭載されているVIRTISの画像を用いることでpolar ovalの光学特性の解明を試みた。まず、VMCの画像を用いてpolar ovalの東西移流速度を求めたところ周期3.5日程度で回転していることが分かった。これは、極域におけるスーパーローテーションの速度とほぼ同じでありpolar ovalがスーパーローテーションによって移流されていることを示唆している。次に、polar ovalの東西移流を考慮し連続した3~4日間の画像をつなぎ合わせることによって、日照側でしか観測できないpolar ovalの全体形状の復元を行った。それによりpolar ovalは細長い形状と丸い形状を行き来していることを発見した。この形状変化の主な周期は200~350地球日であることが分かった。Polar ovalの変動周期は金星の1年、1日、自転周期のいずれとも異なっており、形状の変化は非線形の力学的なプロセスが関わっていることが示唆される結果となった。また、VIRTISのデータの解析によりpolar ovalでは紫外~近赤外の領域にかけて広くアルベドの低下が起きていることがわかった。これはpolar ovalを生成している吸収物質が金星のどの緯度帯においても存在しアルベドの変化を引き起こしている未知の紫外吸収物質とは異なり広い吸収帯を持つことを示唆する結果である。また、polar ovalのアルベドが低下している領域において雲頂の輝度温度が5K程度上昇しているが、その領域においてのみ雲頂高度が上昇、下降している様子は確認されなかった。簡単な熱収支の計算を行うことによりpolar ovalでの太陽光吸収量の差によりpolar oval部分で局所的に温度上昇が起こりうることを示した。