JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] [EJ] あかつき金星周回1.5年とその科学成果

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、山本 勝(九州大学応用力学研究所)、Kevin McGouldrick(University of Colorado Boulder)

[PPS06-P16] 雲追跡手法を用いた金星雲層における物質輸送の研究

*奈良 佑亮1今村 剛2村上 真也3 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.東京大学大学院新領域創成科学研究科、3.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

キーワード:金星、Y字模様の形成、雲追跡

金星探査機Venus Expressに搭載されていた撮像装置VMCにより得られた、紫外の雲画像を用いて、相互相関法により雲頂の風速場を推定し、濃淡模様との比較により紫外吸収物質の分布を支配する力学過程を調べた。ここでは特に、ローカルタイムに固定した輝度分布と数日周期で伝播する輝度分布に見られる惑星規模の濃淡に着目する。ローカルタイムに固定した輝度分布を調べると、スーパーローテーションに近い速度で伝播することが知られているY字模様に似た構造が、太陽直下点から午後側にかけて存在することが分かった。すなわち、これまでY字模様と呼ばれていた模様には、スーパーローテーションに近い速度で伝播する成分と、ローカルタイムに固定した成分がある。ローカルタイムに固定した成分は、熱潮汐波に伴う太陽直下点付近の上昇流と正午付近の中緯度における極向きの流れによる吸収物質の移流により説明できる。一方、ローカルタイムに固定されずに伝播する擾乱について、風速場と輝度変動を周期解析した。その結果、赤道域と中緯度の間で輝度の変動周期は同程度であるものの、背景風に対する相対的な伝播方向は赤道域では西向き、中緯度では東向きであることがわかった。また、中緯度における輝度変動と南北風の位相関係は、背景風に対して東向きに伝播する南北風の場によって吸収物質が輸送されると考えると説明できることがわかった。ここから示唆されるローカルタイムに固定しないY字模様の形成過程は、赤道域においてケルビン波によって下層から供給された吸収物質が周期の等しいロスビー波と、ハドレー循環によって極向きに移流され、さらに高緯度ほど角速度の大きい中緯度ジェットによって西向きに流されることにより、緯度線に対して傾いた帯状構造が形成される、というものである。