JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] [JJ] 惑星科学

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、岡本 尚也(千葉工業大学惑星探査研究センター)

[PPS07-P01] JUICE/GALA-J (2): JUICE搭載ガニメデレーザ高度計 (GALA)が木星氷衛星で目指す科学

*木村 淳1鎌田 俊一2松本 晃治3押上 祥子8並木 則行3倉本 圭2佐々木 晶1塩谷 圭吾4小林 正規5小林 進悟6荒木 博志3野田 寛大3石橋 高5斎藤 義文4Hussmann Hauke7Lingenauber Kay7 (1.大阪大学、2.北海道大学、3.国立天文台、4.宇宙科学研究所、5.千葉工業大学、6.放射線医学総合研究所、7.ドイツ航空宇宙センター、8.工学院大学)

欧日の協同体制で準備が進められている木星氷衛星探査計画JUICE(2022年の打ち上げ,2029年木星系到着,2032年ガニメデ周回軌道投入)において,我々はドイツ航空宇宙センター(DLR)などと協力してレーザ高度計GALAの開発を進めている.GALAは,JUICE探査機から標的の天体表面へとレーザを発射し,表面で反射し探査機へ戻ってくるまでの時間を計ることで距離を測定(レーザ測距)する.これによって,天体表面の詳細で定量的な起伏の情報や,天体全体の形状とその時間変化を測ることができる.こうした観測を通して,GALAは「JUICEが掲げる『生命居住可能領域の探査』の本質的役割を担い,氷に支配された天体の進化の解明に不可欠な情報を史上初めて獲得する」ことを目指している.
JUICEの主ターゲットは,木星系最大にして太陽系最大の衛星,ガニメデである.ガニメデは,惑星級のサイズや金属核起源の固有磁場,大規模なテクトニクスを持つなどの点で,氷天体の代表的な存在と言えるが,過去の数回のフライバイ探査にとどまる知見は極めて限定的である.JUICEは,史上初めての(地球の月以外の)衛星周回探査を行うことによってガニメデの全容を把握し,見出される起源と進化の描像は太陽系内天体の多様性の起源を紐解く鍵となるだけでなく,太陽系内天体の認識に根ざした従来の概念を覆す多様な系外惑星の理解にも大きな寄与を果たす.
GALAによる観測は,氷天体に対する世界初のレーザ測距となる.ガニメデでは周回軌道からの全球測定,エウロパおよびカリストではフライバイ領域での測定を行う.これにより,多様な地形形態と分布が把握でき,氷衛星の地質活動(氷テクトニクス)の理解が飛躍的に向上するだけでなく,その活動様式をケイ酸塩鉱物でのそれと対比することで,地球のプレート・テクトニクスの再考察にも繋がる.また,木星による潮汐の大きさや回転変動の測定を通して地下海の存否が判別できるほか,内部構造に関わる因子の精度が大きく向上する.さらに反射パルスの強度と形状は,レーザ波長での表面反射率や10 m規模の粗度を反映するため,表面の風化侵食の程度や組成の情報を日射角などの観測条件に依存しないデータとして得ることができる.こうした観測と理解の過程には,地球における長年の研究の蓄積が活かされることは言うまでもない.例えばGALAが得る表面地形や粗度・アルベドのデータは,地球の極域や氷河に関する雪氷学や衝突・変形実験などによって得られた知見を通して氷テクトニクスの描像へと繋がる.また潮汐に関するデータは,地球や月(かぐや計画),小惑星(はやぶさ1, 2計画)を対象に長年培われた測地学を基盤として,氷衛星の内部を見通す窓となる.
GALAの観測が直接的にもたらす氷テクトニクス,表面組成,そして地下海など内部構造に関する情報は,他の搭載機器からも多角的な視点で考察を得ることができる.例えば,カメラ(JANUS)が得る画像データはGALAの計測位置を特定し,点の情報を面的な表面地質の理解へと繋げる最も重要な連携機器である.氷層を透過するレーダのRIMEや重力場測定を行う3GMは地質の産状や内部構造の把握に寄与し,可視・近赤外撮像分光計(MAJIS)や紫外撮像分光計(UVS),サブミリ波観測器(SWI)は,様々な波長で表層の組成に関する情報を得る.磁力計(J-MAG)は木星磁場の変動に伴う衛星の電磁感応をモニターし,プラズマ環境観測パッケージ(PEP)や電波・プラズマ波動観測器(RPWI)による観測のサポートを得て地下海の規模や組成(電気伝導度)を制約する.このようにGALAが得る観測データは,他機器が取得するデータと密接に関係し合い,それらの科学目標の基盤あるいはサポート的役割を担う.