JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] [JJ] 惑星科学

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、岡本 尚也(千葉工業大学惑星探査研究センター)

[PPS07-P11] 磁気回転不安定性の空間分布に依存するスノーラインの位置

*森 昇志1奥住 聡1 (1.東京工業大学大学院 理学院 地球惑星科学系)

キーワード:原始惑星系円盤、磁気流体力学、スノーライン

原始惑星系円盤において、氷ダストは固体物質の質量の大部分を占め、微惑星形成において重要な役割を果たしている。それに加え、氷ダストは岩石型惑星の海の起源とも関連しており、惑星形成過程において氷ダストの分布を知ることは、惑星形成のみならず生命の起源を考える上でも欠かせない。氷ダストは、氷の昇華境界(スノーライン)以遠で存在することができ、スノーラインの位置を決定している円盤の温度構造を理解することが特に重要である。円盤が散逸するまでは、スノーラインが存在する円盤内側は光学的に厚いので、降着ガスの重力エネルギーが乱流粘性によって変換された熱が円盤に蓄積し、円盤内側の温度構造を決定すると考えられている。すなわち、この粘性加熱によって、円盤赤道面付近のスノーラインの位置が支配されている(Oka et al. 2011)。

粘性加熱を考慮する際、加熱率が赤道面に集中する分布がよく仮定される。しかし、このような仮定は必ずしも現実的であるわけではない。原始惑星系円盤内における乱流の駆動源の1つは、磁場と円盤ガスとの相互作用によって引き起こる磁気回転不安定である。しかしこの機構は、ガスの電離度が比較的高い円盤の表面部でのみ起こると考えられている。このような場合、円盤内部での熱の蓄積が十分に起こらず、赤道面の温度上昇が起こりにくいことが輻射磁気流体シミュレーションによって示されている (Hirose & Turner 2011)。

本研究では、この事実に着目し、磁気乱流構造に基づいた円盤の温度構造を求め、スノーラインの位置を調べる。具体的には、成層構造と電離度分布を考慮した3次元の磁気流体計算を行い、得られたエネルギー散逸率の分布から動径方向温度構造とスノーラインの位置を求める。数値計算の結果、円盤赤道面から3スケールハイト程度の高さで、エネルギー散逸率が最大値をとることを確認した。これは、Hirose & Turner (2011)の結果と矛盾しない。また、その加熱率の最大値の位置で降着エネルギーが解放されると仮定して、スノーラインの位置を求めた。その結果、中心星への質量降着率が10-8 Msolar/yearのときのスノーラインの位置は、赤道面での加熱を仮定すると3auであるのに対し、3スケールハイト程度の高さでの加熱を仮定すると0.7auになることがわかった。この結果は、スノーラインの位置が円盤の磁気乱流構造によって大きく変わりうることを示すものである。また、エネルギー散逸率の初期磁場に対する依存性についても調べ、初期の磁場強度に対するスノーラインの位置の依存性についても議論する。