JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] [JJ] 惑星科学

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、岡本 尚也(千葉工業大学惑星探査研究センター)

[PPS07-P19] 硫黄の宇宙風化作用に対する影響

*田中 宏和1佐々木 晶1岡崎 瑞祈1廣井 孝弘2 (1.大阪大学大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻、2.ブラウン大学 地球環境惑星科学)

宇宙風化作用は大気のない岩石天体表面で光学的性質の変化を引き起こし、反射スペクトルの暗化、赤化、吸収バンドの弱化が見られる。このような変化は、太陽風の照射や微小隕石の衝突などによるナノ鉄微粒子の生成が原因であるということが知られている。水星の表面でも宇宙風化作用は観察されているが、そこには宇宙風化の光学的性質の変化の担い手である鉄は少なく、その一方で鉄よりも質量でより多くの硫黄が存在しているということがメッセンジャーの探査から分かった。このことから、宇宙風化による光学的性質の変化に鉄微粒子だけでなく硫黄やその化合物も寄与している可能性が示唆されている。そして、硫化鉄を加えたかんらん石の試料では宇宙風化が促進されるということが先行研究によって明らかになった。しかも、この研究の顕微鏡観察(SEM)によって、かんらん石の粒子の周囲に硫黄の蒸着層が存在し、これが水星表面で起こっているような宇宙風化の原因になっていることが示唆されている。本研究では、私たちは単体の硫黄を混ぜたかんらん石の試料に対して宇宙風化を模擬したレーザーの照射を行い、このときどのような変化が起きるのか調べた。まず、かんらん石と硫黄を混合した試料に対して真空チャンバー内でパルスレーザーを照射する実験を行った。試料はかんらん石と10 wt %の硫黄の混合物(ともに粒径45-75 m)から作成し、5 mJのレーザーを照射した。さらに、レーザー照射後の試料に対して熱疲労実験も行った。そして、光学的性質の変化を調べるため、それぞれの実験の後にこれらの試料の反射スペクトル(波長範囲250-2500 nm)を分光器で測定した。
レーザー照射実験の結果、硫黄を含んだ試料では硫黄を含んでいないものに比べ、反射スペクトルのより大きな赤化が見られることが分かった。熱疲労実験の結果からは、加熱によって硫黄が蒸発するに従い、反射スペクトルも複雑な変化をすることが分かった。これらの結果を踏まえると、硫黄は宇宙風化作用における光学的性質の変化に影響を与えているということが言える。