JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] [JJ] 月の科学と探査

2017年5月20日(土) 09:00 〜 10:30 102 (国際会議場 1F)

コンビーナ:長岡 央(早稲田大学理工学術院総合研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、西野 真木(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、本田 親寿(会津大学)、座長:熊本 篤志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、座長:横田 勝一郎(ISAS/JAXA)

09:15 〜 09:30

[PPS08-02] 電子反射法を用いた月磁気異常マッピング

*加藤 大羽1斎藤 義文2横田 勝一郎2西野 真木3綱川 秀夫4 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所、4.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:月、磁気異常、かぐや、電子反射法

地殻残留磁場は地球、火星、月などに存在することが知られており、様々な天体に普遍的に存在する可能性がある。月は全球的な固有磁場は持たないが、磁気異常と呼ばれる局所的な残留磁化領域を持つ天体である。そのため、月磁気異常によって侵入を妨げられない限り、太陽風は月面に直接衝突する。従って月周辺のプラズマ粒子と月磁気異常領域の相互作用は、月面上のプラズマ環境や月表面の宇宙風化作用などに重要な影響を与える。月磁気異常領域の磁場計測の1つとして、電子反射法による測定が行われてきた。電子反射法とは月周辺電子の磁気ミラー効果を利用して月表面磁場強度を求める方法である。月に到達した電子は、月磁気異常が存在しなければ月面に吸収されるが、存在する場合はピッチ角90度以上の反射電子を衛星上で観測できる。このときのカットオフピッチ角と衛星周辺の磁場を計測することで、磁気異常強度を推定する。電子反射法は衛星高度に依らずに月地表面の磁場強度を測ることができ、比較的弱い磁場強度(<1nT)領域まで測定することができる。
Apolloによっていくつかの月表面地点で電子反射計測が行われ、Lunar Prospectorによって月の全域に渡る月磁気異常磁場の測定が行われた。かぐや衛星の観測データはそれらの衛星観測データよりも高い時間分解能で観測されており、従来よりも詳細な磁場構造の解明ができる。
かぐや衛星に搭載されたプラズマ・磁場観測装置MAP-PACE, LMAG の観測データを用い、月磁気異常によって反射された電子と磁場の同時測定を行った。本発表では、このかぐや衛星観測データを用いて作成した高空間分解能(~8km)での月磁場マップを紹介する。また、解析において月表面と衛星の間の電位差の影響を受け、電子のピッチ角分布にエネルギー依存性が存在する例がいくつか見られた。そこで、この電位差による測定結果への影響について考察する。今回の電子反射法による結果と、磁力計による月磁気異常磁場の比較を行い、月面上空の電子反射のふるまいについても議論する。