JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] [JJ] 月の科学と探査

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:長岡 央(早稲田大学理工学術院総合研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、西野 真木(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、本田 親寿(会津大学)

[PPS08-P06] ディープラーニングを用いた月面クレーター検出手法の検討

*伊東 里保1中村 良介1本田 親寿2 (1.産業総合研究所、2.会津大学)

キーワード:Deep Learning、クレーター検出

天体表面の衝突クレーターのサイズ頻度分布から天体表面の形成年代を推定する手法として、クレーター年代学がある。クレーターのサイズ頻度分布を算出するにはクレーターの地理座標と直径情報が必要となる。形成年代の推定精度はこれらのクレーター情報の計測精度に依存するため、高い計測精度のクレーター情報が月表層進化を議論する上で重要となる。
月探査データの空間分解能は格段に向上し,例えば,月周回衛星「かぐや」による月面観測の成果プロダクトであるTCオルソ画像の解像度は最も高いところで約7.4m/pixelである。TCオルソ画像のような高解像度のプロダクトを用いることで、私たちは直径1km以下のクレーターを十分検出できるようになった。その一方で、クレーターの数はその直径が小さくなるほど指数関数的に増加し、手動で計測するには膨大な時間を要する。そうした課題を解決するため,月に限らず様々な天体において、自動的にクレーターを検出するアルゴリズムは、クレーター年代学に適用できうる精度のデータベースを作成することを目標として、継続的に研究されている。
クレーターを検出する手法の一つとして、Convolutional Neural Networkを用いて火星の高解像度画像からクレーターを検出する手法が提案されている(Joseph et al., 2016)。CNNはDeep Learningの手法の一つである。Deep Learningは、多層のニューラルネットワークを用いることで、より抽象的なデータの表現ができる。また、特徴の抽出から識別までEnd-to-Endで行うことができ、更には特徴の抽出や識別に必要な特徴量を教師データから自動で学習できることがDeep Learningの利点として挙げられる。特にCNNは画像認識や音声認識の分野で高い性能を得ている。Josephらの研究においても、CNNは他手法(Bandeira et al., 2010; Urbach and Stepinski, 2008)よりも良い検出結果を得たことが報告されている。
本研究の目的は、Deep Learningを用いてかぐやTCオルソ画像からクレーターを検出する手法の検討である。高解像度画像からクレーター検出を行う手法を確立することで、より直径の小さいクレーターの検出が可能となる事が期待される。Deep Learningを適用するうえで重要な要素の一つは、教師データの準備である。本研究では、雨の海の一部領域(TCオルソフットプリント:TCO_MAPm04_N24E333N21E336SC)について手動で計測を行った直径185m(直径25pixel)以上のクレーター情報を教師データとして利用する。また、TCオルソ画像を北部、中心部、南部の三つの領域に分け、中心部と南部を学習に用いた。北部は精度評価領域とした。クレーターの直径は185mから1kmの範囲で様々なサイズがある。CNNへ入力するデータは、各クレーターの直径に合わせてマルチサイズで切り出し、15x15pixelにスケーリングしたパッチとした。クレーターを含むパッチを正例、含まないパッチを負例とした。つまり、パッチにクレーターが含まれているか否かを学習させた。その結果、評価領域におけるパッチベースでの正答率は9割を超えた。一方で、学習したモデルを用いてシーン単位でクレーターの検出を試み、その結果を目視で検証した。その結果、クレーターが存在する場所には反応を示すものの、形状の検出には至らなかった。また、クレーターに似た特徴を持つ地物に対して誤検出が見られた。これらの改善は今後の精度向上課題となる。
本発表では、TCオルソ画像からのクレーター自動検出に対するDeep Learningの適用性の検討と適用事例の紹介を行う。