JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] [JJ] 宇宙における物質の形成と進化

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 104 (国際会議場 1F)

コンビーナ:橘 省吾(北海道大学大学院理学研究院自然史科学専攻地球惑星システム科学分野)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、大坪 貴文(東京大学大学院総合文化研究科)、野村 英子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:大坪 貴文 ( 東京大学大学院総合文化研究科 )、座長:三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

15:30 〜 15:45

[PPS09-06] 炭化水素5員環・6員環結合モデル分子による星間赤外スペクトルの再現

*太田 憲雄1 (1.筑波大学・数理物質科学研究科)

キーワード:星間ダスト、赤外スペクトル、PAH

星間の多環炭化水素に由来する赤外スペクトルは、数千光年離れた多数のダスト雲でも共通の発光パターンを示す1)。これらの有機分子は生命発現に至る化学進化の第一ステップではないかと推論されている。しかしこれまで数千種にわたる多環芳香族炭化水素(PAH)が地上実験と量子化学計算両面から追及されてきたものの1)、この観測スペクトルを再現できる単一あるいは数個の優位な分子種は未だに見出されていない。
今回5員環・6員環結合の炭化水素に着目し、電荷とスピンをパラメーターとして量子化学計算を行った。数多くの候補の中で、2価陽イオン C23H122+ (5員環2個+6員環5個)の赤外発光スペクトルが、単一分子でありながら3~15ミクロンの範囲で観測結果をほとんど再現できることが分かった2)。またこれより小さいC12H83+(5員環1個+6員環2個)でも主要波長が一致した。Table1にその結果を示す3)
Table 1、Observed interstellar Infrared spectrum and calculated wavelength
of hydrocarbon pentagon-hexagon combined molecule C23H122+ and C12H83+
Observation (micrometer) : 3.3, 6.2, 7.6, 7.8, 8.6, 11.2, 12.7, 14.3
Calculation on C23H122+ : 3.2, 6.4, 7.6, 7.8, 8.6, 11.2, 12.7, 14.1
Calculation on C12H83+ : 3.2, 6.4, 7.5, 7.8, _ , 11.2, _ , _
 このような単一分子での一致は初めてであり、5員環・6員環結合の炭化水素が重要な星間有機分子のファミリーになっている可能性を示唆する。こうした分子ファミリーが生じたひとつの仮説としては、恒星爆発などで生じたグラフェン様物質に、空孔を生じさせる高エネルギー粒子(主にプロトン)、さらに多価の陽イオンを生じさせる高エネルギー光が照射されて起きたと考えている。
参考文献
1)Christiaan Boersma et al, Astrophysical Journal 690.1208 (2009)
2)Norio Ota, arXiv:1412.0009 (2014)
3) Norio Ota, arXiv:1510.07403(2015)