JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] [JJ] 宇宙における物質の形成と進化

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:橘 省吾(北海道大学大学院理学研究院自然史科学専攻地球惑星システム科学分野)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、大坪 貴文(東京大学大学院総合文化研究科)、野村 英子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)

[PPS09-P04] 隕石中有機化合物のナノ液体クロマトグラフィー質量分析

*小池 総司1奈良岡 浩1 (1.九州大学)

キーワード:有機化合物、炭素質コンドライト、nanoLC/MS、不均一性

【序論】
太陽系における始原的な化学組成をもつ炭素質隕石の揮発性成分には有機物や水が含まれている。隕石有機物にはアミノ酸や核酸塩基などの生体関連分子が含まれており(e.g. Burton et al., 2012)、生命の起源の観点から研究されてきた。従来の手法では、一般的に、隕石粉末試料をクロマトグラフィーを用いて順次溶媒抽出をして分析されてきた。しかし、始原的な隕石は化学組成・鉱物組成において不均一であるが、粉末化した試料では鉱物組織などの局所的な情報は失われてしまう。ほとんどの隕石は母天体上で水質変成を経験しているため、有機物と鉱物との関連を理解することは、地球外での有機物の化学進化を解明するために必要である。さらに、非破壊の有機物分析は貴重なサンプルにも応用されうる。本研究では、高感度なナノ液体クロマトグラフフィー(nanoLC)と高分解能質量分析(HRMS)を用いて、地球外物質微粒子の有機物分析の開発を目的としている。
【試料と分析手法】
炭素質隕石2種(Murchison, Murray:CM2)の微粒子(約300〜900μm, 0.168mg〜2.392mg)をメタノール5μLに浸し、超音波抽出、または、撹拌による抽出を行った。その抽出液1μLをnanoLC/HRMS(m/Δm=〜140,000 at m/z 200)で分析した。イオン源にはESI(electro spray)を用い、分離にはC18逆相カラムおよびAmideカラムを用い、溶離液にはアセトニトリル/水/ギ酸系を用いた。抽出・分析はすべてクリーンルーム内で行った。
【結果と考察】
使用した隕石微粒子表面に目立った変化は分析の前後で見られなかった。CHNやCHNOの組成をもつ化合物が多く検出され、イオン質量が14.0156(m/z; -CH2-)ずつ異なることやマスクロマトグラムの保持時間のずれから、これらはアルキル同族体であると考えられる。同族体の検出は先行研究とも一致しており(Schmitt-Kopplin et al., 2010; Yamashita and Naraoka, 2014) 、アルキル鎖が順次増加する炭素伸長反応が起こっていることを示唆している。Murray隕石からはCnH2n-5N(n=5〜26), CnH2n-7N(n=9〜28), CnH2n-1N2(n=5〜23),CnH2n-1NO(n=3〜20), CnH2n-3NO(n=9〜12), CnH2n-5NO(n=6〜26)の同族体を検出することができた。また、Murchison隕石からはCnH2n-5N(n=5〜24), CnH2n-7N(n=10〜26)の同族体を検出することができた。それぞれの同族体の炭素数範囲は隕石試料毎に異なり、隕石中有機物の不均一性を示している。また、不均一な分布は鉱物との関連があると考えられる。隕石母天体上の流動がクロマトグラフィーのような効果により有機物分布にも影響しているかもしれない。隕石組織と有機物分布との関係を解明するためにはさらなる分析が必要である。