16:15 〜 16:30
[PPS10-04] Genesis-DOS試料中に打ち込まれた太陽風起源希ガスのCME起源粒子検出
キーワード:Genesis、太陽風、希ガス、コロナ質量放出、SNMS、深さ方向分析
はじめに:太陽風中に保持された太陽風起源希ガスは、太陽活動を調査するトレーサーとして有用である.近年、NASAによる太陽風サンプルリターン計画(Genesisミッション)により持ち帰られた太陽風照射試料の希ガス同位体研究から、UVレーザーアブレーション法などの希ガス同位体分析によって太陽風元素・同位体組成やその照射量が報告されている(e.g. Heber et al., 2009; 2012). 太陽風照射試料から太陽活動を明らかにする上で重要なポイントは、太陽風中の各粒子の持つエネルギーと照射された固体試料との関係であり、それらは照射試料内の空間分布として保持されている.しかしながら、太陽風の注入深さが小さいため、希ガスの深さ方向空間分布はこれまでの分析手法では明らかになっていない.
近年、微小領域の希ガス同位体深さ方向分析を実現させる装置として同位体ナノスコープ(LIMAS)が開発された(Bajo et al., 2015).LIMASは、高強度フェムト秒レーザー(パワー密度:∼1020 W cm-2)を用いてトンネルイオン化を行う二次中性粒子質量分析器(SNMS)の一種である. Genesis試料中の太陽風起源Heの深さ方向分布は、LIMASによる深さ方向分析により決定された(Bajo et al., 2015).しかしながら、コロナ質量放出(CME)により放出された高エネルギーHe粒子の想定される濃度(3 × 1018 atoms cm-3)がLIMASサンプルチャンバー内の残留Heガスより得られる信号強度と同等の大きさであった.したがって、試料深部領域(>120 nm)のHe,つまりCME粒子が確認できるレベルの高精度な分析は確立されていなかった.そこで本研究では、より高精度・低ブランクの希ガス同位体深さ方向分析を行うための測定法の開発を行った.
実験手法:本研究では、Genesisサンプルリターンにより持ち帰られた試料のうち、Si基盤上にアモルファスカーボンフィルムをコーティングした(DOS)試料をサンプルとして用いた.スタンダード試料として、15keVの4Heを照射したDOS試料(He-DOS)と27keVの22Neを照射したDOS試料(Ne-DOS)、非照射のDOS試料(Blank-DOS)を用意した.
LIMASの分析条件については、まず収差補正機構を用いて、プライマリーイオンビームの直径を1.5 µmにセッティングした.4He+の周回数は100周に設定し、イオンゲートを用い、4Heの妨害イオンである12C3+を除外した.また、サンプルチャンバー内の残留Heを除去するために、より希ガス排気速度の速いイオンポンプ(Agilent Vaclon Plus 500 (StarCell))を導入した.
太陽風起源希ガス同位体を検出するための深さ方向分析のラスター領域は20 × 30 µmに設定し、その中心部分を解析データとして用いた.
LIMASによるデプスプロファイル後、原子間力顕微鏡(Asylum Technology, MFP-3D-BIO-J)を用いて、クレーター形状を測定した.
結果:深部領域のHe濃度はBajo et al.(2015)と比較して1桁以上減少した (≤4 × 1017 atoms cm-3).その結果、太陽風起源He検出を高精度に行うことが可能となり、CME粒子照射深度に相応する100 nm以深のHe粒子の照射痕跡がLIMASで初めて確認された.さらに、深さ方向分析では初めてとなる太陽風起源20Ne同位体の検出にも成功した.
近年、微小領域の希ガス同位体深さ方向分析を実現させる装置として同位体ナノスコープ(LIMAS)が開発された(Bajo et al., 2015).LIMASは、高強度フェムト秒レーザー(パワー密度:∼1020 W cm-2)を用いてトンネルイオン化を行う二次中性粒子質量分析器(SNMS)の一種である. Genesis試料中の太陽風起源Heの深さ方向分布は、LIMASによる深さ方向分析により決定された(Bajo et al., 2015).しかしながら、コロナ質量放出(CME)により放出された高エネルギーHe粒子の想定される濃度(3 × 1018 atoms cm-3)がLIMASサンプルチャンバー内の残留Heガスより得られる信号強度と同等の大きさであった.したがって、試料深部領域(>120 nm)のHe,つまりCME粒子が確認できるレベルの高精度な分析は確立されていなかった.そこで本研究では、より高精度・低ブランクの希ガス同位体深さ方向分析を行うための測定法の開発を行った.
実験手法:本研究では、Genesisサンプルリターンにより持ち帰られた試料のうち、Si基盤上にアモルファスカーボンフィルムをコーティングした(DOS)試料をサンプルとして用いた.スタンダード試料として、15keVの4Heを照射したDOS試料(He-DOS)と27keVの22Neを照射したDOS試料(Ne-DOS)、非照射のDOS試料(Blank-DOS)を用意した.
LIMASの分析条件については、まず収差補正機構を用いて、プライマリーイオンビームの直径を1.5 µmにセッティングした.4He+の周回数は100周に設定し、イオンゲートを用い、4Heの妨害イオンである12C3+を除外した.また、サンプルチャンバー内の残留Heを除去するために、より希ガス排気速度の速いイオンポンプ(Agilent Vaclon Plus 500 (StarCell))を導入した.
太陽風起源希ガス同位体を検出するための深さ方向分析のラスター領域は20 × 30 µmに設定し、その中心部分を解析データとして用いた.
LIMASによるデプスプロファイル後、原子間力顕微鏡(Asylum Technology, MFP-3D-BIO-J)を用いて、クレーター形状を測定した.
結果:深部領域のHe濃度はBajo et al.(2015)と比較して1桁以上減少した (≤4 × 1017 atoms cm-3).その結果、太陽風起源He検出を高精度に行うことが可能となり、CME粒子照射深度に相応する100 nm以深のHe粒子の照射痕跡がLIMASで初めて確認された.さらに、深さ方向分析では初めてとなる太陽風起源20Ne同位体の検出にも成功した.